留学生の就労事情を紹介してきたところで今回は、この留学生シリーズの初回で触れた出入国管理法(入管法)改正について再考してみたい。
この改正法は、最初の5年は有期の就労資格であり、それを超えた人は、条件を満たせば期限なく日本にいられることになる。この改正案には反対意見も多い。日本人の雇用を減らすのではないか。もしくは、せっかく人手不足で給与待遇が向上してきたのに、それに水を差すのではないか、というものだ。
確かに日本の非正規就業者の賃金は低い。この改善は進めなければならないが、ただ、いくら改善しても、未就業者自体が少なくなっているのだから、「人手不足」は収まらないだろう。そこで、待遇改善と新規人材確保の両面が必要となる。
もう一つの反対意見は、不当な労働環境にあった外国人技能実習生を例に出して、受け入れ体制が整っていないというものだ。ただ、技能実習で問題を起こす企業は、そこで働く日本人にもひどい対応をしている。ならば監視を強めて外国人も日本人も待遇改善したほうがいい。
外国人技能実習機構がそのために2017年設立され、厚労省と法務省から現役スタッフが600人も加わった。労働者対比で考えれば、労働基準監督署の管理よりもはるかに厳しい。この仕組みをさらに拡充して不正を正せばよいのではないか。
この度の入管法改正で新たに特定技能という資格で外国人就労が可能になる。当初は1号という資格で5年間勤務可能であり、満了時の技能・日本語レベルにより2号へと移行する。ただ、このバーは相当高く、現実的には5年で帰国となる人が大多数ともいわれる。これではやはり、使い捨て感がぬぐわれないだろう。
その代わりに私が主張したいのは、5年滞在後、条件を定めそれを満たした外国人には、大学進学を勧めるコースだ。そのために、企業・本人とも積み立てを実施し、就学しないなら一時金で帰国時に渡すようにすればいい。日本の大学は何度も指摘したように「就業天国」だ。大学進学すれば4年間また労働ができる。そして、卒業後に正規就職できた人に就労ビザを下ろせばいい。
これならば、今までの仕組みでうまくいく。何より、5年も日本で働いて何の問題も無く、そのうえ日本で高等教育を修了し、なおかつ新卒採用まで至った人が永住することに文句を言うことはできないだろう。
現在の改正入管法は、単純労働に門戸を開くものだから、逆に就労目的での留学をする人が減少する可能性もある。それを補うためにも、こんな案はいかがだろう。
(雇用ジャーナリスト)