ある大手広告代理店の人事担当経験者がこう言っていた。「エントリーシートに勲章はいらない。あくまでもそのために行動したこと、努力や経験を話してほしい」と。
「関東大会で1位になった」「全国大会で何位。その部長だった」など勲章が並ぶエントリーシートは立派だ。しかし「面接に呼んで、その中でどんな苦労があったのか、突っ込んで聞いてみると、しっかりと答えられないのではがっかりです」。
確かにそうだ。学生時代にサッカーチームでよい成績をあげたとしても、サッカー選手として採用するわけではない。ビジネスパーソンとして採用するのだから、当然といえば当然のことだ。
もちろん、ビジネスは結果がすべてともいえる世界なので、大会で何位になったという結果は大切だし、それが目を引くのも確かだ。だが就活のエントリーシートや面接では、その輝かしい結果よりもむしろ、そこに至った過程の苦労やその人なりの工夫、そこから得た内面的なものについて話を聞いて評価する。こうした企業、人事担当者は多いといえるだろう。
エントリーシートの指導をしていると、とかく「書く内容が見当たりません。人と比べて特に秀でたところもないし、目立った経験もない」と気弱になって立ち止まってしまう学生が目に付く。
だが「勲章はいらない」となれば、気は楽だし、勇気が出てくるのではないだろうか。学生時代一番力を入れた経験でも、自己PRでも同じことだ。輝かしい勲章がなくても、地道に活動したことを仕事になぞらえて伝えることができればいいのだ。人と比べる必要はない。自分なりの努力や長所を伝えるように考えてみよう。
では、冒頭の人事担当経験者には、どんな学生が印象に残っているのか。
マイナースポーツのハンググライダーに打ち込んだ学生に、どんな気持ちで飛んでいたのか、怖くないのかと聞いてみたという。すると「怖いです。なのでいつも鳥のように上から広く地上全体をしっかり見ながら飛んでいたので、物事を俯瞰(ふかん)して見る癖がついています」と答えが帰ってきた。俯瞰という広い視点で物事を捉えることはビジネスに応用できるものであり、内定を出したそうだ。
チームでの活動や運動系の話は、協調性や忍耐力など、仕事になぞらえて話すことができ良いアピールになる。だが、そこに必ずしも輝かしい勲章は必要ないということだ。自分の経験の中から仕事に生かせそうな能力がついた話を引っ張り出して伝える準備をしてみよう。
(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/