知っておきたい就活情報

【就活のリアル転載】止まらぬ出生数減少 大学経営、留学生確保が要 海老原嗣生(2019/3/5付 日本経済新聞 夕刊)(2019/03/12)


 留学生と就活の関連を6回にわたり展開してきたが、このテーマの最後で大学経営について考えてみる。

 日本はまだまだ少子化が進む。出生率は2005年でボトムとなり、その後は少し持ち直したが、出生数の方は下がり続けている。早晩、存続が危ぶまれる大学が続出するだろう。大学経営を成り立たせるには、留学生確保が勝負となる。

 日本に来る留学生には2つのパターンがある。上位難関校は研究目的、中位以下の無名校は就職目的だ。この2つがあることで、多くの大学で留学生確保ができる。

 では日本の大学は、現地の高校生を相手に、何をアピールすればいいか?
 

 まず、日本の大学は新卒一括採用という出口での武器がある。欧米だと職業訓練を受け、ほぼ無給で長期間実習生として働いても、なかなか就職先が決まらない。この差は大きい。

 しかも、日本の初任給は、母国のエリート層を除いて比べてみればとてつもなく高い。普通の人で、しかも未経験の若年者が年収300万円程度ももらえる国はまずない。これは大いにアピールすべきだ。

 さらに日本の学費は英米よりはるかに安い。英国以外の欧州よりは高いが、そちらでは進級が厳しく卒業できるのは6割程度。入学者の95%程度が卒業できる日本はまさに天国だろう。また、大学時代はアルバイトし放題で、他国のワーキングホリデー同等以上なのだから、こちらもアピールポイントになる。「だから日本はだめだ」といわれ続けたことが、逆転の発想で留学生集客に使える。

 そんなお気楽募集ではなく、本気でエリートの卵に来てもらうことも当然、必要だ。そのためには高校生を狙うのがいい。付属高校から大学まで7年間日本で学べば、言葉も習慣も完璧に覚え、大卒後、日本の大手企業でも普通に働けるだろう。

 すでにこのことに気づいて、九州地区の高校を傘下におさめる上位大学が出てきた。九州ならアジア各国と1~2時間でつながり、格安航空会社(LCC)を使えば費用もそれほどかからない。「寂しくなったら週末に帰れます」という言葉で優秀な高校生の心をくすぐる作戦が透けて見える。

 さらに、技能実習生や新型ビザで就労する外国人たちにも、大学進学を勧める。1学年あたり10万人、学年定員の2割程度、留学生を集められれば少子化でも大学経営は成り立つ。

 その頃、日本の大学生は、どの学校に通っても級友の2割は外国人という環境になる。それは日本にいながらにしてのグローバル体験であり、大学に通う意義がより明確になるだろう。

(雇用ジャーナリスト)


     

前のページに戻る