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【就活のリアル転載】OG訪問をしよう 働き方の実態 生の声から 上田晶美(2019/3/26付 日本経済新聞 夕刊)(2019/04/02)


 「OBよりもOG訪問がいいとは思うのですが、OGが少ないので、OBの人でもいいですか?」
 ある総合職希望の女子学生からの相談だ。最近、OB訪問時のセクハラについての報道が目立つこともあり、できれば女子学生は女性の先輩に話を聞きに行くよう指導している。そもそも、男性の先輩に話を聞くよりも、女性の先輩に聞いた方が働く実態についてわかりやすいだろう。

 そう言うと「男性も育児休業を取る時代になったんだから、あまり変わらないのではないですか?」と彼女は食いついてきた。確かにそれは理想であり目指すところだが、実情はどうなのか調べてみてほしい。

 例えばその一例として男性の育児休業はどうか。厚生労働省の2017年度の調査によれば、現状の性の育児休業取得率はわずか5.14%ということである。これでも伸びたといえるが、女性の83.2%に比べると男女が平等とはいえない。

しかも、その育児休業の期間については不明だ。1年間なのか、はたまた1カ月なのかはわからない。以前ある企業の講演で、育休を取った男性が壇上で「2週間の育休を取った」と言って大ブーイングを受けていた場面に遭遇したことがある。通常の有給休暇と同じレベルだ。

 2週間の例はともかく、1年取得している男性が5.14%ではない。あくまでもこの調査は「妻の出産した年に育児休業をスタートした人」をカウントしている。それでも進歩といえば進歩なのだが、報道の大きさに比べて、実態は大きく違い、学生の認識不足を助長しないようにしたいところだ。

 さて、本来、OG訪問で聞きたいのは、働き方の実態である。冒頭の女子学生は海外志向が強く、すぐにでも海外出張に行きたいようなのだが、それが女性に可能かどうかを調べること。女性一人で海外出張に出してくれる会社なのか。また、男性の上司と女性の部下がペアで海外出張に行くと、あらぬ噂をたてられて困った過去の経緯があるからひかえているという会社もある。大手企業に入れば、女性の上司もたくさんいて問題ないのだろうが、中小企業となると女性の総合職はまだ少ない場合も考えられる。

 女性の働き方をはじめから限定して考えるのは門戸を狭めて良くないし、男女平等だと信じすぎているのも怖い。入社してからこんなはずではなかったということのないよう、OG訪問で実情を知った上で、切り開いていく勇気を持ってほしい。OG訪問が容易でない実態を見ても、女性の総合職はまだまだ足りないと思う。

(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/


     

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