OB訪問時のセクハラ被害が後を絶たず、あるまじき事態になっている。OBと就活生をつなぐ専門アプリが出てきたことが要因の一つと思われる。そのアプリ全てを否定するつもりはないが、手軽さ故、悪用されるケースがあることは否めない。
就活は大手就活支援会社のアプリを通じてエントリーを開始するので、それとの違いは学生にはわかりづらいかもしれないが、よく吟味して利用しなくてはならない。自衛策としては、大企業の社員だからと簡単に信用せず、個室に入らない、お酒の出るところは避けるという事を徹底してほしい。その前に、前回もこのコラムで書いたように女子学生はOBではなくOGに会うことだ。もしもOGを探せなかったら、無理にOB訪問をする必要はなく、インターンシップに参加すればよい。
そもそもOB訪問は時代とともに姿を変えてきた。実際、過去には、就活の第一ステップのような位置づけの時期があった。私自身、会社員2年目の1984年、その会社のOGリクルーターとして活動した経験を持つ。人事部から「この学生に連絡を取って近くの喫茶店で仕事の話をしてほしい。面談内容、評価の報告書に喫茶店のレシートを付けて提出したら後から精算するので」と依頼された。
その年は5人くらいの後輩に会っただろうか。その後何年か続けた。当時の私の報告書に一次面接のような重きをおかれたのかどうかは定かではないが、実際に入社してきた後輩も多かった。
その後、私は会社を辞めて就活のコンサルタントとして独立するのだが、97年に出版した就活の解説本で「OB訪問の仕方」に触れている。OB訪問は会社の説明を聞くだけでなく、就職協定解禁前の「青田買い」だった時もある。説明会を公然とは開けない時期に学生とコンタクトを取って、会社の説明をし、優秀な学生は早めに面接ルートに乗せるという役割だ。通常ルートよりも早く確実に引き上げてもらうために、1社で20人のOB・OGに会ったという学生もいた。
それが大きく変化したのは、2005年施行の個人情報保護法がきっかけだ。大学側が卒業生の名簿を公表できなくなったため、OB訪問はぐんと減っていく。同時にインターンシップが隆盛となっていった。
こんな事件が増えると、OB訪問は過去の遺物であり、その役割を終える時が来たのかもしれないとすら思う。今はそれに代わるものとして、インターンシップがあるのだから、そこで存分に会社の実態について尋ねる方がよいのではないだろうか。
(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/