知っておきたい就活情報

【就活のリアル転載】企業名を知らない大学生 まず身近な商品に関心を 上田晶美(2019/5/28付 日本経済新聞 夕刊)(2019/06/04)


 大学の講義で人気企業ランキングについて話をし、「旅行・観光・航空会社は相変わらずの人気です」と並び順に企業名を見せたら、ある学生が「JTBってカード会社かと思いました」と言った。JTBとJCBを勘違いしたらしい。

 大人なら間違うことはあまりないほど両者は全く別の業界の大企業。JTBは旅行会社で、JCBはカード会社だ。このように企業名を短縮し、いわゆるスリーレターコードに省略して、そのまま企業名、ブランド名になっている例はよくある。

 特にJはジャパンの頭文字であり、Jのつく企業・団体名は多い。JR、JA、JRA、JALなどなど。人気企業ランキングの上位に入る企業には特に多く、聞きなれない名称だと勘違いするのも無理はないのか。

 3年生以下の学生にキャリアの講義をしていて感じるのは根本的に「会社名を知らない」ということだ。JTBとJCBは一文字違いで間違えやすいが、そもそも知っている会社名の少なさに驚く。その理由の一つに最近の大学生のテレビ離れがあるのかもしれない。若者たちはテレビを見なくなっており、テレビCMを見る機会が少なくなっている。

 テレビの民報局であれば、番組の途中に企業のCMが入り、番組の提供名にキャッチフレーズまで入って会社名が連呼される。知らず知らずのうち企業名は刷り込まれていくものだ。

 ところが若者たちの娯楽は移り変わり、テレビに使われていた時間の多くはスマートフォンに移行。ゲームやお気に入りの「You Tuber」の動画を見ることにあてられている。「You Tube」にもCMは入るが、容易にスキップすることができ、CMを見る頻度はテレビに比べ圧倒的に少ない。

 やりたいこともわからない、目指す会社の名前も知らないところから就活はスタートすると思うと、道のりは遠いと感じる。

 ある大学の就職支援の担当者は学生に「テレビのニュースを見るように」と指導している。学生たちはニュースもスマホでトピックスを眺めるだけで、芸能ニュースくらいしか見ていない。「テレビを見るな」と言われて育った世代が今度は、「テレビを見よう」と学生に言っているなんて皮肉なものだ。

 ニュースはさておき、企業名の学習のためにテレビを見ようとは誰も言わない。就活を意識したら、まずは「会社名を知る」ことからはじめてはどうだろうか。生活の中で身近な商品についてラベルを見るなどして「どこの会社が製造したものか」と関心を持つようにしてみよう。低学年からでもできる準備の一つだ。

(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/


     

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