今年も6月1日に倫理規定上の採用面接が解禁され、企業も大手を振って就活生に対して内定(正式には内々定)が出せるようになった。
もちろん、倫理規定などおかまいなしに早くから大学生の採用選考を行っている企業も少なくない。ということで、今ごろはそこかしこに就職先が決まった学生があふれているはずだ。そのあおりで、いまだに内定が取れていない学生たちには焦りが生まれているだろう。
折から採用は売り手市場だと騒がれ、誰も彼もが有名企業に採用されてしまうと思ってしまう風潮もある。まだ内定が取れていない学生たちはきっと、「名も知れない企業を受けるのはいやだなあ」と思っていたりしないか? こんなことから、就活好況期にも学生たちが苦しむ事情がある。そこで、採用市場について少し細かく書き進めたい。
人気ランキング100位に入る企業の年間採用数の推計を私の会社では2000年から20年にわたり出している。まず、新聞や雑誌、ホームページなどに出た情報を集めていく。この段階でも少し精査が必要だ。発表数の中には、高卒や短大卒を含めているケースが多く、また、大卒でも一般職などの非総合職込みの数字を掲げている会社があるからだ。
こうした数字を除いていくと、大体100社のうち60社くらいしか正確な数字はわからなくなる。この数字をもとに人気ランキング1社あたりの平均採用数を出し、それを100倍したものが、当年の人気ランキング100社採用数推計となる。
2000年代初めのころの採用氷河期ではこの数が1万3000人まで下がった。それが昨今では3万人を超えている。かなり大幅に増えたのは事実だろう。ただそれでも、大学生1学年の定員は60万人を超え、卒業生も55万人にもなる。その数からすると、昨今でもほとんどの学生は「人気ランキング100社に入れない」という事実がわかる。
採用数3万人というのがどのくらいの狭き門なのかをわかってもらうため、私は以下のようなたとえ話をする。日本のトップレベルの大学として、国立旧帝大7校と私立の二雄である早慶の1学年総定員は約4万人だ。高校生であれば、こうしたトップ大学にはそうそう簡単には入れないことは皆知っている。人気ランキング100社の門は好景気とてそれよりもはるかに狭い。
現在のような売り手市場期でも、名の通った人気企業に入れる学生はほんのわずかであり、それ以外の企業に行くのはとても当たり前のことだ。気落ちせず、しっかり就活を続けてほしい。
(雇用ジャーナリスト)