知っておきたい就活情報

【就活のリアル転載】内定率は高めに出がち 落ち込むのはまだ早い 海老原嗣生(2019/7/2付 日本経済新聞 夕刊)(2019/07/09)


 今、まだ就職が決まらず悩んでいる就活生、そしてその親御さんたちに向けて今回は話を進めたい。まず、前回書いた通り、「キラ星の人気企業」に入れる人は、売り手市場のこのご時世でもほんの少しだ。だから、そこを落ちるのはいたって当たり前のことでしかない。

 よくネットなどには、6月時点で内定を持っている人の割合が9割などという情報が流れる。ただ、こうしたデータは、その多くが、関連サイトに登録している就活生について調査したものだ。

 彼や彼女らは、インターンシップなどを通して早期から就活を進めており、だからこそ、対象サイトの会員にもなっている。そんな先鋭組の状況数値であり、平均的な学生の動向とは明らかに異なる。全体を見れば、一部の有名校を除く普通の大学では、6月末時点では決まっていない学生の方が多いというのが私の所感だ。

 公的なデータでは厚生労働省が発表している就職内定状況調査がある。こちらは毎年10月1日に初回調査が行われるが、就活売り手市場と騒がれた昨年でもその数字は77%にしかなっていない。それでも過去20年間で最高だ。

 しかも、この数字でさえ実際よりもかなり高めに出ているといわれる。その理由は、調査対象に偏りが見られるからだ。現在、全国には800校近くの大学がある。そのうち、この調査はたった62校しか対象にしておらず、そのうち国公立大学が24校占める。

 国公立大学は比較的偏差値が高く地元を中心に就職に有利なことは言わずもがなだろう。その比率が全調査対象の4割にもなる。ちなみに、実際の大学数でいうと、国公立は2割にすぎない。

 さらに言えば、この調査の分母になるのは「就職希望者」だけだ。はっきりと就職を希望しない学生は、対象からはずされている。ここまでのことが重なれば、数字はかなり高めに出るのは確実だろう。それでも、10月1日時点での内定率は77%であり、繰り返すがそれで過去最高なのだ。

 ここまでのことを知れば、6月末時点で落胆しすぎることはないと気付くだろう。いや落胆していることこそ、成長のあかしだと、本人も親御さんもそう認識すべきだ。しっかり就職に向けて頑張っているからこそ、その反動で不合格に気落ちするのだ。

 少しその気になって、ナビサイトや新卒応援ハローワークを見れば、まだまだたくさんの求人があることに気づく。もう少ししたら心を整理して、就活の中盤戦に挑んでほしい。チャンスは限りなくあるはずだ。

(雇用ジャーナリスト)


     

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