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【就活のリアル転載】SNS世代の鬼門 電話対応 社会人への一歩 上田晶美(2019/7/9付 日本経済新聞 夕刊)(2019/07/16)


 「あすワンデーインターンシップに行こうと思っていた会社を、間違ってキャンセルしていました。もう無理でしょうか」と学生が相談してきた。就職ナビサイト経由で申し込んでいるインターンシップで、サイト内の操作がまだ不慣れだったため間違えてしまったらしい。「キャンセルを受けつけました」というメールが来て気づいたという。他の日程で申し込もうとしたが、既にすべて満席になっていたそうだ。

 「電話してみたら」と言うと「えっ? 電話してもいいんですか」という返事。確かに学生全員が電話をしてきたら会社側は対応でパニックになってしまうが、緊急のことは電話するしかない。緊急とはきょう、あすのことである。戸惑っていたが、「失礼のないように自分の非をわびて、ぜひ参加したいと言えば、きっと受け付けてもらえるから」と言うと、勇気を振り絞って電話したらしい。後日聞いたら、無事に参加できたと明るく答えていた。

 メール、SNS(交流サイト)世代の学生にとって、電話をかけることはかなりハードルが高くなっている。学生時代だけでなく、会社に入っても新入社員の最大の鬼門は電話の対応である。固定電話が家にない世代であり、携帯電話がこれだけ全員にいきわたっているのに、その用途は電話することではなく、メールなのだ。

 アルバイトで電話に慣れている一部の人以外は、会社に入ってすぐにかしこまった電話をするのはなんと緊張することか。私はかつて企業の新人研修を担当していた時代があり、今でも講師が足りない時、年に1回くらい新人研修に登壇している。会社側に「最低でもマナーよく電話を取れるようにしてください」と徹底事項として依頼されるので時間をかけて練習する。

 冒頭の学生は会社に電話して参加の交渉をすることで一つ階段を上がったと思う。電話してもいいんだということを知る。電話する緊張を体験する。電話の話し方を習得しなくてはと気づく。それだけでなく、間違いは誰にでもあるが、へこたれず、それをどうリカバーしていくかが、この先の人生においては大事だということを学んだに違いない。

 実際、インターンシップは残念ながらドタキャンする人も多いと聞く。準備していた会社側は予定が変わるし、受けたかった他の学生の機会を奪うことにもなるので、真剣に申し込むようにしたい。長期のインターンシップの場合は必ず一度は電話で持ち物などの詳細について確認するようにと指導する大学もある。インターンシップから社会人への一歩が始まる。

(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/


     

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