知っておきたい就活情報

【就活のリアル転載】知名度だけでは見誤る 個性生かせる企業探そう 海老原嗣生(2019/7/16付 日本経済新聞 夕刊)(2019/07/23)


 日本企業の新卒一括採用というのは学生にとって、一時期に苦しさが攻め寄せる仕組みである。実に、嫌なものに感じるだろう。

 ただ、この連載で何回も触れたが、新卒一括採用をとらない欧米中ならそれが楽かというと、違った意味で実に厳しい現実がある。どこの国でも入職というのはそれなりに苦いものなのだ。ならば、思いっきり日本型就職の仕組みをポジティブにとらえてみよう。

 まず、就職人気ランキングの上位企業に入るのは難しいことを認識する。それは好景気で売り手市場の昨今にあっても受験で「旧帝大・早慶」に入るよりも狭き門だと以前に書いた。だが、その難しさについて、学生たちはほとんど知らない。

 どこの大学でも、何年か前に1人だけ入社した人気企業の名を就職実績に掲げていることが多い。学生たちが「私もひょっとしたら」くらいに思ってもいたしかたない。

 これが、就活初期でなかなか成果が上がらないことにより、「そんなに生易しいものではないな」と実感する。そして落ち込む。ここまでが第1段階だ。

 多くの学生は高校のころにトップ大学を受けようとは思っていないはずだ。それは中学、高校を通した受験や模試などにより、誰もが難関大学に入れないことを認識しているからだ。そうした相場観を培うのに、数年の年月がかかった。それを就活は初期の12カ月で認識させる。それだけ効果があるともいえるだろう。

 ここから先は、人気ランキングなどにこだわらず、自分を生かせる企業を探すことが大切だ。あと数年もすれば人気企業に入った勝ち組たちがつらい顔をして「こんなはずじゃなかった」という場面に多々でくわすだろう。その時に「俺は無名企業だけど楽しく働いているぞ」といえるように頑張ろう。

 この時期、親御さんたちにはとりわけ気を付けていただきたいことがある。子供が内定した企業に対して、知名度や規模だけで判断しないでほしいのだ。この段階でも採用を続けている有名大手企業には、何らかの問題があることも多い。それは、内定辞退が続くのか、もしくは、退職者が多すぎて欠員が埋まらないのかのいずれかだからだろう。

 にもかかわらず、親御さんたちは、「テレビでCMもやっているあの大手だから」と内定を喜んでしまう。一方、中小でもきらりと光る企業、何より子らの個性を生かせる企業も多々ある。ところがそうした企業は、「名も知れないから心配」と子供の気持ちを砕くような発言をしがちだ。これは絶対、避けた方がいい。

(雇用ジャーナリスト)


     

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