そろそろ、大企業が新卒採用の予定数の内々定を出し終えて、採用窓口を閉じる時期だ。中小企業はこれからが採用の本番になるだろう。今回は企業向けに、この時期ぜひ、注意していただきたい話を書いておく。
ここまで就活を続けている学生はかなり疲れている。不合格を重ね、精神的にも肉体的にもダメージを受けたためだ。そこで、これ以上、疲れさせないように採用を工夫することがポイントとなる。
まず、履歴書などは不要にする。基本、採用担当者は学生の卒業論文や専攻内容など、あまり関心を持っていないだろう。最低限必要な、学校学部名や住所、氏名などはナビサイトからエントリー情報で十分わかる。ならばそれだけでOKとする。
続いてエントリーシートだ。そもそも大企業は何のためにこれを利用しているか。第一の理由は、応募者を絞るためだ。学歴で絞り込むことは現実的には多いが、そのまま言えない。そこで、それをわからないようにする隠れみのとして「エントリーシートで落ちた」という形で使う。同様に、「自社への本気度で絞り込む」という活用法もある。かなりやっかいなお題を出すのだ。そうすれば、本気でない学生からの応募が減る。
いずれも、万の数のエントリーがくる人気企業がやることで、普通の中小企業には必要のないことだ。
とはいえエントリーシートには、本人の特性を知り、選考や面接の資料にするという本来の使用法もある。こちらはやはり重要な意義をもつだろう。ということで、エントリーシートを廃止にはできない。そこで一つ手を紹介しよう。
それは「他社に出したエントリーシートでかまわない」という手法だ。「その中で一番うまく書けた1枚をお送りください」とする。これで、本人の特性もわかるから選考や面接には役立つ。そして学生本人の負担も減る。
最後に、説明会も工夫したい。できることなら採用担当者の方は、学生になったつもりで他社のそれを受けてみてほしい。業績や技術など、眠くてつまらない話が続く。要は「企業が伝えたい話」ばかりで、それが「学生に届く」ように加工されていないことが多いのだ。
そうした中ある企業は6人1チームで人生ゲームのような「すごろく」をする説明会を開いている。サイコロを振って出たマス目に止まると、仕事や事業に関わることが書かれている。結果、飽きずに楽しく会社説明が終わる。学生に届く工夫だ。
こんな形で、学生負担を減らす。それを採用広告でアピールする。そうすれば、応募者も格段に増えるはずだ。
(雇用ジャーナリスト)