知っておきたい就活情報

【就活のリアル転載】採用勝ち組企業の活動 学生に寄り添う工夫を 海老原嗣生(2019/8/13付 日本経済新聞 夕刊)(2019/08/20)


 今回も新卒採用をしている企業向けに書く。よく「昨今は売り手市場」もしくは「中小だから」「地方企業だから」と色々な理由をつけて、採用不振を嘆く企業が多い。さも、しかたがないことだ、という話だ。対して私はこんな話をする。「でも、周囲には採用に成功している企業があるのではないですか?」

 そう、規模や地域を問わず、採用勝ち組企業は少なからずあるのだ。そうした企業は、何が違うのか?

 本当に簡単なことだ。採用もビジネスも基本は変わらない。まず第一に、他社よりも工夫をすること。周囲と同じことをやっていては、成功などできないのだ。ではどんな工夫をすべきか。それは「顧客の喜ぶことをする」。これはビジネスの基本だろう。採用勝ち組企業は、この当たり前のことを就活する学生に対しても、しっかりやっているのだ。

 前回書いた、「履歴書は不要、採用ナビの登録情報でOK」「エントリーシートも他社の使い回しで可」「説明会は人生ゲーム」といった工夫はすべて、「学生の気持ちに寄り添った」施策だ。このように、採用プロセスの随所で学生の気持ちに寄り添う工夫を盛り込む。

 ただ、「学生の気持ち」は時期により大きく変わる。だから時期に応じて「工夫」も変えなければならない。

 例えば、就活直前の大学3年の冬休みあたりに学生が喜ぶようなサービスは何か。簡単なことだ。彼らはまだ本物の面接を受けたことがないから、それを不安に思っている。そこで、「模擬面接会」を開催すれば多数の学生が集められる。

 人材系のビジネスを生業にしているある大手企業は、社内の管理職を総動員して、模擬面接会を開催している。それで一気に1000人を超える学生が集まる。中小だと1社だけでは難しいだろう。

 そこで、地元の商工会や経営者協会に加盟する企業が集まり、団体主催という形で「模擬面接会」を開催するのはどうか。すでに、北九州地区などはそうした形で、地元大学と地元企業を結びつける工夫をしている。

 このように、時期に応じて学生の気持ちをくみ、彼らがしてほしいようなサービスを提供していく。直接学生と関わりを持つことができ、知名度や好感度もアップしていく。

 サービスを受けた学生が直接応募してくれることもあるし、彼らからの発信で周辺の学生が応募してくれることもある。また、内定を出した学生が迷っている時に、彼らにひと押ししてもらえたりもする。要は、少し長い目で、「損して得とる」型の採用活動をすべきなのだ。

(雇用ジャーナリスト)


     

前のページに戻る