前回のコラムで「長い目で学生に寄り添い、損して得をとる型の採用活動を」と書いた。企業向けにこの続きを書いておこう。
就活のスケジュールに合わせて順に考えていく。たとえば就活が始まる前の時期、大学3年の学生向けに何をやるべきか。業界説明会を開催したいと大学側に持ちかけるのがいい。個別企業の説明会などこの時期に受け入れられはしないが、業界の説明であれば、キャリア関連の授業に取り入れられる可能性は高い。
その際の「コツ」は業界を大きく広げること。たとえば、自動車のネジを作っている会社でも、「自動車業界」と広げれば学生の興味を引ける。その際、町中の中小企業で部品しか作っていないというハンディを逆手にとること。有名な完成メーカー何社にもその部品を流しているだろう。
だとすると、そうした大手人気メーカー数社を横並びで社風から技術力まで説明できるはずだ。これは大手企業1社が自社のことだけを説明するよりも喜ばれる。そんなふうに「あの人気企業が横並びで比較できる」説明会と銘打って学校にも提案してみよう。
3年生の夏休みは、インターンシップの時期だ。こちらも名もない企業は学生集めに苦慮する。いざ応募があると今度は、限られた社員しかいない中で、学生にどんなプログラムを提供するか、そこに難渋する。だからインターンシップを忌避する中小企業は多い。そんな時にとっておきの方法がある。
それは、「あの人気企業の実態がありありとわかる」というサービスだ。どの無名企業でもたいてい何社かは、大手の人気企業を取引先に有している。だからそうした人気企業とからむ仕事があるはずだ。その場面にカバン持ちとして学生が立ち会える、というだけのプログラムだ。これなら手もかからない。そして、人気企業の実態を知りたい学生がそこそこ集まる。
こんな形で学生の気持ちに寄り添う工夫は、時期に応じて形を変えて提供可能だ。ただ、こうしたサービスは、間に入る大学とコネクションがあるかどうかが成功のポイントとなる。それをどう確保するか。ここにも裏技がある。就職ナビの営業担当を使うのだ。就職ナビを運営する企業は、同じ事業部内に大学向けのサービスを行う部署を有する場合が多い。
そこで、広告やイベントなどの各種商品を売りに来た営業担当に、「あの大学とコネクションを持たせてくれるなら」というバーター条件を出す。それで解決できるだろう。要は、ただでは買ってやらないぞ、と迫るのだ。
(雇用ジャーナリスト)