知っておきたい就活情報

【就活のリアル転載】無料ナビサイトの裏側 利益構造、慎重に見極めを 上田晶美(2019/9/3付 日本経済新聞 夕刊)(2019/09/10)


 学生のみなさんは総じてお金がないから、倹約の精神で一円でも安いものを吟味して買う、使う、できれば無料のものを利用するということは当然の行動である。しかし、世の中「タダより高いものはない」ということわざもあることを警告を兼ねて伝えておきたい。

 大手就活サイトの内定辞退率に関する情報流用が問題になっている件だ。法令順守は最低限のことであるし、何より学生の信頼を裏切る結果となっていることは大変残念だ。さらに就職業界のリーディングカンパニーであることを考えるとその責任は重大といえる。この機に私も含め、就職業界に関連する全員が襟を正さなくてはならない。

 また、この件はそもそも個人情報保護法に抵触するものではあるが、学生個人が自主的判断で利用しているサイトというよりも大学側が登録を勧めているサイトであることも事実だ。多くの大学では大学主催のセミナー内でナビサイトへの登録を推奨しており、その場で登録させている例もある。

 学生は当然、大学の講師が話すのと同様の重さでナビサイトを信頼する。それを考えると、大学側の今後の姿勢についても改めて検討が必要だと思う。学生を守る立場の大学とナビサイトにもたれあいがあってはならない。

 学生が就活ナビサイトを利用するのは無料だ。インターネットの時代になって、無料のものに慣れていることもあり、それについて学生はなんら疑問を持たないかもしれない。

 しかし、これから就職する、社会に出るという年齢になれば、その無料サービスの資金はどこから出ているのか、利益の仕組みはどうなっているのかに思いを巡らす必要がある。例えば、SNS(交流サイト)では個人の利用は無料だが、企業が広告を出すとなると、数百万円単位の広告費がかかるという仕組みになっているように。

 また、ナビサイトとは違うが、就活の自己分析などを行う無料セミナーが広がっており、それにも警戒してほしい。私は26年間この就活支援の仕事に関わってきたが、入り口は無料でその後に続く高額なセミナーを売り込む手口のセミナー商売がなかなか後を絶たない。学生は慎重に見極めてほしい。

 ところで、大学のキャリアセンターの利用は無料だろうか。それは学費に含まれているサービスなので、無料ではない。使わないのは、むしろお金を無駄にしていることになる。

 タダより高いものはない。無料がすべて悪なわけでもない。就活を機に無料サービスの裏にはどんな利益構造があるのか、よく考えるようにしていこう。

(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/


     

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