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【就活のリアル転載】ドイツの職業訓練 高卒時点で「一括採用」 海老原嗣生(2019/9/24付 日本経済新聞 夕刊)(2019/10/01)


 ドイツは若年失業率が低い。その裏にあるのがデュアルシステムという職業訓練法だ。この仕組みは企業の実利をうまく利用する形で作られている。コラムで以前、この職業訓練のプログラムの改廃について書いた。今回は実際の運用を見ていくことにする。

 まず、ドイツの高校生は卒業時期になると、新聞や専用サイトなどに掲載される各企業の「訓練ポスト」求人を熱心に読み込む。そうして、いくつかの求人に応募する。選考は日本の新卒採用と大差ない。高校時代の成績、面接、小論文もしくは応募趣意書(エントリーシート)で合否が決まる。

 もちろん、人気のある企業や職務には多くの学生が集まるから、そうした難関求人にはなかなか採用されはしない。そこで、あまりにも不合格が多い場合、名も知れぬ小さな企業か人気企業でも好まれない職務の求人へと応募を変えていく。

 本来、職業訓練を受けるのであれば、どの企業でもいいはずだが、現実はそう簡単ではない。実は、訓練ポストで採用された学生の多くは最終的にその企業に本採用されるからだ。大企業の場合、公的なデータで見てもその割合が8割にもなる。一方、中小企業だと数字は下がるがそれでも6割近くとなる。こんな感じで高卒時点で将来がかなり決まってしまうのだ。だから、学生も真剣になる。

 これは、私たちにとって見たことのある風景ではないか。そう、日本の新卒一括採用に近しいのだ。高校卒業時点では社会の仕組みもほぼわからず、仕事についても茫洋(ぼうよう)とした知識しかない。そのうえ、大した専門能力も有していないだろう。にもかかわらず、ある年齢で一斉に企業を選び、ちょっとした選考で人生が決まってしまう。

 いや、この仕組みは日本の新卒一括採用よりもかなり企業寄りに作られている。訓練ポストはあくまでも「一時的雇用」であり、それが終了したのちに、勤怠や業績の優れないものは「不採用」にできるのだから。そのうえ、その間の給与は日本の新卒初任給とは比べものにならないほど安い。

 やっていることは日本と同じだが、それをシステム化し、さらに訓練期間は労働対価も少なく、そして不適合者と判断すれば弾く。以前にもこのコラムに登場いただいた山内麻理氏(国際教養大学客員教授)は、こんな状況を「ドイツ的合理性」と説く。

 対して日本は、全員雇用し高い給与を払うという浪花節的環境だから、滅私奉公とかブラック労働などが横行するのだ。さて、どちらが良いと日本の学生はいうのだろうか。

(雇用ジャーナリスト)


     

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