「入社して半年がたちましたが、学生時代とあまり生活は変わりませんね。思ったより楽です」。IT(情報技術)企業の入社半年後研修を行ったところ、新入社員の一人から、そんな感想を聞いた。その会社には30人が入社し、半年たった今も一人も辞めていない。スムーズに社会人生活がスタートできたということに、研修担当者としてはホッとした。
IT企業といえば以前なら「ブラック企業」の代表のようにいわれてきたが、働き方改革が進み、残業はぐっと減っている。「残業しているのは課長だけですね」と言っていた。今後の課題のようだ。
私は学生の就活、企業側の採用活動の専門家であると同時に、その延長線上にある、入社後の新入社員の育成にも20年余り関わってきた。就職の相談にのり、就職した後も継続して支援し、見守っていけるのはうれしいことだ。
その新入社員研修も近年すっかり様変わりした。以前ならば、人事からは「厳しくお願いします」と言われたものだが、私にいま依頼してくる会社はそんなところは見当たらなくなった。「あいさつをはじめとして、マナーよく、コミュニケーションが取れるように」という依頼がほとんどである。
せっかく入った新入社員を大事に育てるのは当たり前だが、以前は研修では厳しく練習して、本番では楽に通用するようにという願いもあったのだろうか。「通過儀礼」の意味合いも強かったように思う。
「もう学生ではない」という明確な線引きをさせるための儀式的なものというとらえ方である。ショック療法とでもいおうか。「軍隊まがいの野外活動」をさせる会社まであり、恫喝したり、「泣くまでやらせる」といったりするのを聞いたこともあるが、今では影を潜めた。それこそ、パワハラである。
それでも今でも厳しめの新入社員研修をやる会社もあるようだ。一体どんな目的があるのか。「早めにふるい落とすため」と聞いたことがある。なぜ厳選採用しないのか。学生にすれば厳しい就職活動を経て入社したというのに、その直後に研修でふるいにかけられては迷惑千万である。採用時点で見分けられなかった会社の責任は大きい。
就活において会社を選ぶ基準として、どんな研修があるのかを確認するのも一つだ。よく「研修が充実している」と聞いただけで安心する学生もいるが、その中身も心配である。パワハラ研修はないと思うが。
きょうは10月1日。内定式に参加した人も多いことだろう。実りある研修が待っていることを祈る。
(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/