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【就活のリアル転載】大学に通いながら企業実習 超ハード、ドイツの仕組み 海老原嗣生(2019/10/8付 日本経済新聞 夕刊)(2019/10/15)


 ドイツという国は、学業と職業の連結が本当にうまくできている。その理由の一端としてデュアルシステムという職業訓練法について触れてきたが、今回、改めて詳しく紹介する。要は、高校卒業時点でいったん仮就職し、そこで2~3年鍛えられるという仕組みだ。

 これは企業実習が主であり、その傍らに通う職業訓練校は従となる。もともと、中学卒業者が職人になるために作られた制度であったが、高校進学者が増えるに従い対象職務も変え、時期も高卒時点が主流になった。

 現在では大学進学者が多いため、対象職務にはホワイトカラーやエンジニア職が増えている。ただし、いまだに実施時期は高校卒業時点が多い。結果、若者は、この訓練を終えた後に大学へと進学する。結局、大学進学は2~3年遅れてしまうのだ。このことに不満を持つ学生は多い。

 企業も、訓練生を2年程度鍛え、「さあ、本採用だ」となったところで、彼らは大学に行ってしまう。入社してくれるのはそれから3年して大学を卒業したあと(ドイツの大学は3年制)になる。これはやはり不都合だ。

 そんな学生・企業双方の悩みを解決するために、近年は「デュアル・ストゥジアム」という仕組みが普及している。これは大学通学に並行して、企業に訓練生として採用され、実習を行うというシステムだ。職業訓練校が行っていた座学メニューは、大学のシラバスに組み込み学ぶことになる。

 これなら高卒後スムーズに大学進学でき、しかも、訓練を終えた学生たちをシームレスで入社させることができる。

 ただこれは、大学に通う傍ら企業にも勤めるということだから、恐ろしいほどのハードスケジュールとなる。大学への夜間通学や、長期休暇の返上などは当然のことだ。

 それを完遂するには相当な体力・知力・忍耐力が必要だろう。そこで、このデュアル・ストゥジアム修了生は企業からも一目置かれ、社会的にも称賛されることになる。

 前にこのコラムでドイツの学歴評価に関して触れたことがある。日米英仏などは、ブランド力のある有名校に進学することが「学歴」となる。対して、ドイツの場合は、大学間のブランド差は少ない。

 そこで、かの地では、「早く(飛び級)」「高く(修士・博士)」が学歴として評価されることになる。日米英仏型を「ヨコの学歴」、ドイツ型を「タテの学歴」という呼び方があるのを紹介したが、このデュアル・ストゥジアムなども「早く」という意味でやはりドイツ型「タテの学歴」にふさわしい仕組みなのだろう。

(雇用ジャーナリスト)


     

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