昨今、日本の大手企業にも、一部のエリート学生を超高額な年収で新卒採用する動きが広まりつつある。その初任給は年収1000万円にもなる。この採用手法に関しては、いよいよ日本型の横並び人事管理が欧米並みになっていくのか、と歓迎する声をよく聞く。果たしてそのとおりにうまくいくのか。
私の結論は、「うまくいく会社群とそうでない会社群に分かれる」というものだ。うまくいくケースとしては、大手でも学生の人気が高くない外食チェーンなどがある。今回は、エリート採用が奏功する事例を考えてみる。
旧来、外食チェーンでは採用した新卒学生に長らく店舗勤務を強いた。その期間は短くて5年、長いと10年を超えるケースも多い。そして、店舗勤務を卒業後も、多数の店舗を管理するスーパーバイザーや地域統括など、基本は「ずっと店舗を管理する」分野でキャリアを全うしていく人がほとんどだった。すなわち、飲食・サービスのプロをつくることを目的にした人事制度といえるだろう。
とはいえ、この形だと、本社にいて管理部門やマーケティング、商品開発、製造管理、販売戦略、広報宣伝などを担う人材が育てられない。
いやそれ以上に、店舗勤務を嫌うから、そもそもこうしたヘッドクオーターで働くことを目指す大学生が、応募してくれない。そこで、こうした仕事は、中途採用で人材を補充するか、もしくは外部パートナーに任せることになる。
ただ、それも限界が来ている。会社の細かな特色などが理解されずに戦略が練られてしまったり、もしくは、せっかく立てた新戦略が外部に流れてしまったりするからだ。
そろそろ本格的な「ヘッドクオーター人材」を生え抜きで育てなくては……。こうした思いから、超高額年収のエリート採用を決めたのだろう。この「超高額年収」採用は、通常採用とは別建てであることが明確にわかるから、今まで忌避していた学生層へも訴求ができる。
彼らには現場経験は短くして、その後は、内勤で企画職についてもらう。そうしたキャリアパスもしっかりつくり上げれば、今までは外食産業を見向きもしなかった学生が集まってくるはずだ。
外食は素材の多くを外国から買い入れている。また、サービスの多くにIT(情報技術)が組み込まれ省力化を進めている。さらに、店舗人材は多国籍に及ぶ。グローバルかつハイテクな環境で高年収な企画職につける。そうしたことを打ち出せば、名ばかりのエクセレント企業よりもこちらを選ぶ学生は多いのではないか。
(雇用ジャーナリスト)