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【就活のリアル転載】「少子化で採用難」と嘆く前に 解決のカギは女性活躍 海老原嗣生(2019/12/10付 日本経済新聞 夕刊)(2019/12/17)


 「いやあ、最近は新卒で大学生なんてほんと採れないよね」。こんな、経営者の声をよく耳にする。その原因を少子高齢化による若者人口の減少と結び付けて、この採用氷河期は永遠に続くという解説も見かける。だが、現実は全く異なる。

 大学新卒者の採用が売り手市場なのは、好景気だからであり、人口構成とは全く関係ないと断言しておく。だから、この先、景気が崩れれば、就職に困る学生はすぐに増え、また、企業側は今よりは幾分、採用が楽になるといえるだろう。

 なぜ、少子高齢化と大学新卒者の採用難は結びつかないか。理由は簡単だ。学年人口は確かに1970年代前半の第2次ベビーブーム期よりも半分になっている。

 ただし、大学卒業者の数はどんどん増えているのだ。30年前に比べて約5割、20年前と比べてもまだ約1割も増えている。だから、新卒の「大卒者」をターゲットにした場合、少子化とは関係がないことがわかるだろう。

 この話をすると、訳知りの人からは、以下のように反論を受ける。「確かに大学生自体は増えている。ただ、人口が半減する中で、大学進学者が増えているわけだから、かつてと比べて、基礎能力や学力では相当に見劣りするのではないか?」。この話に対しては、半ばうなずきながらも、いやいやと、私は続ける。

 この30年間で企業が採用したくなるような名門大学はなべて定員を増やした。いわゆるターゲット校の学生はかなり増えているのだ。この話に対しては、「その分、学生レベルが落ちているのではないか」と再反論を受けそうだが、それも違う。

 その昔は男尊女卑風潮の中で女性たちは「4大(4年制大学)行ったら就職ないよ」といわれて渋々と短大に通っていた。文学部や教育学部を除けば、男子学生の割合が9割を超える大学も少なくなかったのだ。ところが昨今は、文系学部であれば名門校でも4~5割は女子学生である。

 つまり、かつては確かに学年人口が倍はいたが、そのうち、大学に行くのは男性ばかりであり、女性に門戸が開かれていなかった。

 ところが現在は、人口こそ半分になれ、男女が機会均等になりつつある。つまり、トータルで考えれば、名門校の学生レベルは、けっこう担保されているのだ。

 だから、こうした社会変化に対応して、女性活躍をしっかり推進している企業は、それほど人材難にはなっていない。一方、男性偏重を変えられなかった企業は、より強く人手不足にさいなまされている。

(雇用ジャーナリスト)


     

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