知っておきたい就活情報

【就活のリアル転載】3年以内の離職傾向強く 若手にキャリア提示を 上田晶美(2019/12/17付 日本経済新聞 夕刊)(2019/12/24)


 「若手が辞めていくときに『やりたいことができないから』と言うんですが、育ててもらった恩はどうなっているのかと、がっくりきます」。あるメーカーの人事担当がこぼしていた。その社員はまだ2年目だったということだ。

 最近は配属を希望できる会社が多い。この担当者も、辞める前にもっと自分の希望を伝えて会社側と調整すればよいのにと思うが、誰にも相談せずに一人でネットで求人を見つけスパッと辞めていくケースが多いとぼやいていた。会社によって人事異動のサイクルは様々ではあるが、3年単位という会社が少なくない。ところが若手にはその3年が待てなくなっている。

 厚生労働省はこのほど、2016年3月に卒業した新規学卒就職者の就職後3年以内の離職状況について調査した結果、大卒で32%(前年比0.2ポイント増)だったと発表した。よくいわれる3年以内に3割辞める傾向はますます強くなってきている。

 社員側の立場になれば「やりたいことができない」なら会社を辞めることは、理にかなっているようにも思う。何年待てば希望の職務に就けるのかが不明では、景気のよい今のうち、若いうちに転職したいという気持ちにもなるだろう。

 そもそも就活の時に、何かにつけて聞かれるのがこの「何がやりたいのか」という問いである。自己分析でも、業界選びでも、中心になってくるのは「何がやりたいのか」というものだ。大学のキャリアセンターで聞かれ、会社説明会で聞かれ、面接で聞かれる。

 はじめから自分の軸として、例えば「アジアと関わること」などの「やりたいこと」があって活動している人もいるが、多くの学生はわからないまま、悩みながら手探りで活動を進めていくように思う。活動していく中で見つかるケースもあれば、なんとなく内定にこぎつけるケースもある。「何がやりたいのか」を問う習慣は就職活動によって身についてきたのかもしれない。

 若手としては、悩んだ末にたどりついた「やりたいこと」が、入った会社で実現できないのは残念に違いない。「やりたいこと」を見つけて採用されたのに、なぜできないのか? という矛盾を抱えてしまう。

 現実としてはその「やりたいこと」が経験を積まないとできないこともあるし、会社の人員配置の都合もある。会社側は「AとBの経験を積み、何年後にCの職務に就く」という具合にできるだけキャリアパスを示し、未来について対話する機会を持つように努めることだろう。「石の上にも三年」だけでは引き留めることは難しい。

(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/


     

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