大学新卒者の採用に関しては、少子高齢化は関係ない、今、採用難なのは単に好景気だからだ、と前回のコラムで書いた。ただ、高卒人材にスポットを当てると話は全く変わってくる。
学年人口が第2次ベビーブーム期より半減する中で、大学進学率が高まったために、高卒で社会に出る人は激減したのだ。その数は、30年前と比べて5分の1にまで減っている。こうした人材が支えていた産業、たとえば製造、建設、サービス・流通、農林水産業などは、新規人材の確保が難しい状況が、今後も長期にわたって続くだろう。
ただ、製造、建設、農林水産業はかつてと比べ空洞化や衰退などで産業規模がかなり小さくなった。必要とされる人材も減ったため好景気を過ぎれば人手不足感はやや和らぐだろう。
一方、サービス・流通業は、不景気でも売り上げ変動は少なく、安定的な人材ニーズがある。しかも、空洞化など関係ないため、30年前と比べて産業規模は大きくなっている。今後、人口減少でパイは縮むといわれるが、それとて、年率0.5%程度だろう。つまり、当分の間、人手不足は収まりそうにない。のみならず、サービス・流通業にはさらにもう一つ、人手不足の要因がある。それが、昨今の女性活躍だ。
もともと、日本社会には性別役割分担が基調としてはびこり、結果、女性は一度職についても、結婚や出産により家庭に入るケースが多かった。彼女らが子育てを終え、40歳前後で再び社会に出たとき、職務ブランクが10年もある女性を正社員として雇ってくれる企業は少なかった。
こんなことから、彼女たちは、パート社員としてサービス・流通業で働くという選択肢を選ばざるをえなかったのだ。結果、サービス・流通分野では、長らく優秀な女性を低賃金で非正規雇用できる、という追い風を受けてきた。
ところが昨今は少子化の中で企業は女性を進んで新卒総合職として採用するようになった。彼女らも結婚や出産という場面を迎え、一人前に育って業績を上げだす時期に重なることになる。第一線でバリバリ働く彼女らを、企業としては手放したくはない。だから企業は育休や短時間勤務を取り入れ、結果、結婚でも出産でも辞めずに働き続ける女性が増えてきた。それが昨今の女性活躍につながる。
ここまで書けば、わかるだろう。この流れの中で、育児に専念するために会社を辞め、それが終わったあと、パート社員としてサービス・流通業で働くという女性の数は今後どんどん減っていくだろう。サービス・流通業は脱パート女性を真剣に考えるべき時だ。
(雇用ジャーナリスト)