ここまでしばらくの間、不況期の人材採用をどのように成功させるか、という企業向けの話をしてきた。今回は、大卒以外の人材、たとえば製造や技能や販売、サービスなどの職務については、どのように補充をすればいいか、を考えておきたい。
こうした人材の欠乏感は大卒ホワイトカラー職のそれとは大きく異なる。何度も書いた通り、大卒人材は少子高齢化の中でも30年で1.6倍にも増えている。対して、高卒で働く人は30年前の5分の1にまで減っている。新規人材の基礎数は信じられないほどに細っているのだ。
加えて、販売やサービス部門では中途参加する人材として、主婦や高齢者のパート労働が今まではあったのだが、先細り感が日に日に色濃くなっている。
過去、日本社会には性別役割分担という差別的な風習が色濃く残ったため、既婚女性は家事育児のために、職場を離れる傾向が強かった。そうして子育てを終えて社会復帰しようとしたとき、ブランクのある彼女らを正社員で迎える職場は少ない。だから、不本意ながらパート労働に就く人が多かった。
それが、近年は人手不足の中で男女共同参画が進み、家事・育児と並立して既婚女性が継職できる環境が整ってきた。そのため、「主婦パート」の新規就労者がこれまでのようには見込みにくくなりそうだ。
高齢者の就労についても実は今が端境期にある。ここ10年、65歳以上の就業者数が300万人も増えた。ところが今後はその増加も先細りとなっていく。この間、就業率が劇的に伸びているのは、65~74歳の前期高齢者のみであり、75歳以上の後期高齢者のそれは10%足らずで停滞し続けている。要は、前期高齢者が人材補填の頼みの綱だったのだが、これから先、2022年以降、第一次ベビーブーム世代が75歳に達するため、彼らが激減していくのだ。
明らかに、日本の雇用は、彼・彼女らが支えていた非ホワイトカラー領域から脆弱になっていく。それも、ここ数年以内に大きな問題が起きる。この領域は大卒ホワイトカラーと違い、「採用永久氷河期」ともいえるだろう。さて、この難題にどう立ち向かうか。
一つは、AI(人工知能)やIT(情報技術)を用いた無人化・省力化投資だろう。近年、セルフレジなどがようやく普及しつつあるが、この流れをさらに早める必要がある。技能実習生、特定技能資格就労などの外国人材の受け入れなども有力な選択肢だ。そしてもう一つ。非ホワイトカラー領域で、今までになかった人材確保術が静かに浸透しつつある。次回はその方法についてつまびらかにすることにしよう。
(雇用ジャーナリスト)