「エントリー数を増やすことは必要だと思うのですが、どうやって増やせばいいのかがわかりません」。前回コラムに対して学生から質問が来た。なぜそんなことに悩むのか。興味のありそうな会社にエントリーすればいいだけなのに。10社にエントリーしているそうだが、選択基準は「大学の説明会に来てくれた中から、いいなと思った会社にエントリーした」という。
3年次の夏のインターンシップのエントリーからそうしてきたそうだ。ところが新型コロナウイルス対策の影響で、その頼みの学内説明会や学外の合同説明会が開かれないのだから、お手上げというわけだ。つまり、一部の学生はコロナの影響で企業との出会いの場が少なくなっている。就活における大学のキャリアセンターの位置づけが大きくなっていることを感じる。
こうなったらウエブで調べるほかないわけだが、漫然と就活ナビサイトの企業ページを見ていても、エントリーしようという強い動機づけにはなりづらいかもしれない。
そこで私がお勧めしたいのは、今エントリーしている会社のライバル会社にエントリーしてみようというものだ。こう言うと素直な学生は驚く。あるサッカーチームを応援していて、一人の選手がライバルチームに移籍したりすると、裏切られたような気持ちになるからだ。
それはわかるが就活は別問題である。会社の好き嫌いも大事だが、ほんのひとかけらの印象だけで判断しているのかもしれず、自分が働く会社は慎重に多面的に研究すべきである。
企業研究には他社との比較が必要なので、ライバル会社を知っておいて損はない。そもそも別業界の会社同士は比較検討しづらいものだ。同業界であれば利益構造や市場の現況などが似ており、同条件で比較研究できる。現在10社エントリーしているのなら、企業研究のためにライバル会社にエントリーすれば、単純に考えてエントリー数は倍になり、最低目標の20社は充足する。
ではライバル会社とはどんな会社か。トヨタと日産、電通と博報堂、というように有名企業ならわかりやすいが、そればかりではないので、キーワード検索などして調べてみよう。「わが社はオンリーワンの会社です」という会社でも、似たような商品を扱っているところはあるはずだ。その場合、企業規模は違ってもいい。むしろ同等のところと、断然規模が違うところの両方見てみたい。
同業他社と比較検討するために、あえてライバル会社にエントリーしてみよう。今年に限っては、エントリーが企業研究のスタートなのだから。
(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/