就活をめぐる風景が、ここ1~2カ月で一変した。言うまでもないが、コロナウイルス禍によるものだ。4カ月前のこのコラムで、就職売り手市場は一過性のものであり「少子化だから永続的だ」というのは間違いだ、と書いてきたが、不幸にもその通りとなってしまった。
就活生、その親、そして大学関係者はあまりの急変に面食らっているのではないか。以下、本年の就活がどのようなものになっていくかを、ざっと話していきたい。
新卒採用というのは、企業にとってかなり大きな経営事項の一つだ。だから採用人数やそれにかかる予算、プロセス設計などは相当早くから決めている。大手企業であれば、前年の夏から秋、中堅企業でも年末くらいまでには確定させている。
今回のコロナウイルス禍はその一報が入ったのが年初であり、当時はまだ「人から人への感染は不確定」程度のものだった。それが重大なものだと本気になって認識したのは、1月20日に中国の習近平主席から公式な発表があってからだろう。
日本の場合は、それからほどなくダイヤモンド・プリンセス号の集団感染があり、2月中旬にはコロナウイルス禍が身近なものになっていた。この時点では欧州は全く他人事であった。米国ではトランプ大統領がしきりに「インフルエンザの方が大変なことだ」と語っていた。つまり、世界的には大したことではないと考えられていたのだ。
こうした楽観風が吹いていたため、日本でもサッカーJリーグは2月20日時点では「通常開催」をうたい(2月25日に延期決定)、就職ナビを運営する大手数社も2月下旬には大規模合同説明会を開いていた。そう、2月末時点では就活自体も予定通りで動いていたといえるだろう。それが3月の1カ月で急変した。これだけの急変だと、企業側は今現在、採用プロセスの再編に四苦八苦しているところだろう。
そこに、オリンピックの延期までもが決まった。今までならば「夏は五輪で採用ができない」という後ろがない状況で計画を立てていたが、そこも大きく変わる。つまり、ようやく変更した採用計画が再変更になる。ひょっとすると仲良し日本企業群は面接解禁時期まで調整するかもしれない。
こうした中では、抜本的な採用削減までは踏み込めない企業が多いと読む。各所に調整して採用計画を大幅に見直しができないからだ。つまり、採用数は減少するが、激減とまではいかないだろう。それはすなわち、今までのバブル的な採用売り手市場が終わっただけで、決して氷河期ではない。普通に戻るだけだと思っている。
(雇用ジャーナリスト)