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【就活のリアル転載】ウェブ面接に限界 人となり対話で深掘り 上田晶美(2020/5/12付 日本経済新聞 夕刊)(2020/05/19)


 ある人事担当者が「ウェブ面接をやっていて気づいたのは、全身や行動を見ないと、人はわかりづらいということですね」と語っていた。ウェブではみんな同じに見える。話し方だけでなく、ドアから入ってくるところや、何気ない手のしぐさなど、全体を見て判断していたのだと改めて気づいたという。

 ウェブ面接では上半身だけがパソコン画面に映っており、大した動きもなく、どんな人なのかという「人となり」を判断することは非常に難しいものだ。だが、このコロナウイルスの終息時期によっては、最終面接までウェブになり、本人には一度も会わずに内定を出すことになるやもしれない。もはやウェブ面接は一次面接など初期のものという位置づけではなく、採用の最終判断まで非対面でしなくてはならない事態も想定内なのである。

 そこでその人事担当が工夫していることを聞くと「できるだけ対話すること」であり、そのためには「質問の仕方」が重要だという。限られた時間なので、エントリーシートの内容をもう一度言わせることはせず、深掘りの質問から入るのだそうだ。はじめからズバズバと聞き、面接というよりも対話して、相手の人となりにできるだけ肉薄している。

 例えば、「商店街の活性化プロジェクトに参加したとありますが、どこの町ですか」「はい。〇〇区のハッピー商店街です」「ああ、区役所の近くですね。有名ですよね」と会話が続くかどうか。内容を深掘りして真偽を探るのではなく、反応の仕方を見たいのだ。「こういう質問にこう答え、対話力あり」という報告を書かないと、面接の合格不合格のエビデンスにならない。

 つい先日、大学のウェブ講義のための研究会で、ウェブ授業をいち早く取り入れて話題になっている福岡県の高校の校長先生に話を聴いた中で印象に残ったことがある。

 「ウェブ授業はあくまでも学習サポートであり、授業を100%再現できるものではありません。生徒は一日中スマホやパソコンで授業を見ていたら、疲れ切ってしまうので半分の時間数にして授業を組み直した」そうだ。積み残した部分はコロナウイルスが終息してから取り戻せばよいという考えであろう。

 採用活動もできるだけウェブ化し、質問を工夫したりという努力はするが、そこには限界があり100%対面と同じ効果を得るのは無理がある。ウェブ化の思いがけないメリットもあるわけだが、積み残したものはアフターコロナで対処するという気構えが必要なのではないか。生きていればなんとかなる。

(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/


     

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