コロナ不況下で人気企業が採用を絞る中、名は知られていなくともよい企業を探すことが、今年以降の就活では求められる。そこで、良い会社の見つけ方を前回からテーマとして「ブラックではない」企業の見つけ方について書いた。「危ない企業を除く」というもので、消去法的な手法といえるだろう。
逆に「良い」と思える企業はいかに探すべきか。実はこれが意外に難しいことだ。
例えば、ここに性格が全く異なる2人の学生、A君とB君がいる。A君は積極的、度胸があって少々ずうずうしいくらいのタイプ。B君は繊細で控えめ、自分よりも他人をおもんぱかるタイプ。A君が心底ほれていい会社だと思ったのは「他人を蹴落としても1番になれ、嫌われることなど恐れず人より目立て」という企業だった。A君がこの会社について「とってもいいとこだぞ」と話をしても、B君は全く合点がいかないだろう。
そう、会社選びとはそういうもので、人それぞれに「いい会社」とは異なるということをまずは念頭に置いてほしい。多くの人が良いと思いがちな「給与が高い」もしくは「残業が少ない」という指標でさえ、「給与は安くていいから暇な仕事」こそという人もいるし、反対に「残業はいくらあってもいいから、とにかく給料が高いところ」という人もいる。本当に、仕事選びは人それぞれなのだ。
良い企業とはすなわち「自分に合っている企業」ということになる。先輩や友人や世間の評価で企業を決めるくらいバカらしいことはない。
ここでいよいよ本題だ。「自分に合っている」とはどのようなことなのか、について説明していきたい。
かつてリクルートグループにて、新卒入社3年以内にやめてしまった人に、どこが会社と合わなかったのか、大掛かりな調査をしたことがある。結果、「合わずに辞めてしまう」のは以下の5つの軸で、企業の風土と本人の価値観に相違があったのだ。
(1)周囲との関係。「競争的」か「協調的」か
(2)発想の方向性。「革新的」か「伝統的」か
(3)判断の基軸。「情緒」か「理性」か
(4)評価ポイント。「行動」か「思考」か
(5)行動の傾向。「スピード」か「緻密」か
これらの点で企業風土と個人特性が大きくずれている場合、「耐えられない」ことになる。だから、就活時には給料や労働時間などの即物的指標だけで企業を決めず、この5点について、自分と企業にずれがないか、よく見ることが重要となる。
(雇用ジャーナリスト)