本来ならそろそろ大学生も夏休みに突入の時期だが、今年は新型コロナウイルス感染症による休校期間などもあり、休暇期間は短くなっている人が多い。夏休みといえば、インターンシップの季節でもあるが、短い休みの間に効率よくそれを受けるための方法を改めて考えていくことにしたい。
もともと欧米のインターンシップは日本とは大きく異なる。未経験の新卒者を大量に採用する企業は欧米にはそれほど多くない。ジョブ型雇用が基本となる欧米では職務単位で「それができる人」を随時採用する。こうした場合、一介の若者は職にありつくことが難しい。それが、欧米、とりわけ欧州の高い若年失業率となっている。
よく、欧米通という人が、「向こうの場合は大学の専攻と仕事が結びついている」と語るが、現実はそんなに甘くはない。もしそうだとするなら、法学部を出た人は弁護士、政治学部を出た人は政治家、文学部を出た人は作家、くらいしか仕事がなくなってしまうだろう。
逆に、企業の側から見れば、営業も総務も人事も、それに適する大学の専攻などほぼないことに気づく。つまり、かの国でも大学の専攻と職業はいわれるほどにつながっていない。
また、欧州では職業訓練が充実しているといわれるが、それも高卒者対象に企業派遣を主、訓練校を従とする、いわば、計画された下積み労働でしかない。やはり、大学生にはなかなかふさわしくないものだ。
ということで、普通の大学生が仕事にありつくためには、何らかの形で仕事を覚える方策が必要不可欠となっていた。そこでインターンシップという仕組みができたわけだ。
ジョブ型で仕事を得るにふさわしい腕前になるのが目的だから、ハードかつ長期間となる。フランスのデータでは、平均的な大学生は在学期間中に14カ月もインターンシップを受けているという。それもフルタイムに近い形で下働きをし、死に物狂いで仕事を覚えるのだ。その間の給与は、原則、最低時給の3分の1となっている。時給400円で1年以上働くことで仕事を覚えるのだ。
ちなみに欧州の大学は原則3年制である。その短い学生期間に14カ月インターンシップをする。しかもなぜ原則、賃金は最低時給の3分の1なのかというと、それを超えると企業には社会保険料を支払う義務が発生するからだ。それ以下のインターンシップは無保険ですむ。
どうだろう。1週間でも長いといわれ、学生保険加入が原則義務化され、鉦(かね)や太鼓で学生を喜ばせてくれる日本のインターンシップは、欧州学生から見たら夢のような仕組みだ。
(雇用ジャーナリスト)