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【就活のリアル転載】コロナが崩す性別役割 営業、外勤・体力勝負は古い 上田晶美(2020/7/21付 日本経済新聞 夕刊)(2020/07/28)


 「世界中どこにでも営業に行けます! と強気で答えたら受かりました」。営業職に内定した女子学生からうれしい報告をもらった。前回に引き続き、女性の営業職について考えたい。

 女子学生に営業職を避ける人が多い理由には誤解が多いと書いたが、営業は外回りで体力勝負といったイメージが根強いのも理由の一つだと思う。男性が外勤、女性が内勤という、いわば家庭内にも似た性別役割分担の既成概念である。学生本人の意識もそうだが、受け入れ側の企業の方が腰が引けている傾向を感じるので、彼女のように自信をもってキッパリと決意を述べることは有効である。

 あるIT(情報技術)企業の人事担当は「今年は女子が内定者の半分を占めており、どうしようかと迷っているところです」という。過去は2割程度だった女子を、いきなり5割にするというのは冒険ではないかというのが理由だ。前年の実績を大事にする日本らしい経営体質なのか。女性は体力的に続かないのではないかという懸念があるそうだ。

 しかし、このコロナ禍によってウェブでの営業が増え、外勤内勤の壁はなくなりつつあると感じる。営業は外勤だから体育会系で体力勝負という考え方や、外に出て「靴を履きつぶすくらい客先を回ってこい」というような営業スタイルはもはや過去の遺物ではないか。コロナ禍の今の営業は外に出ず、パソコン越しに会話する。歩き回る必要もなければ、暑さ寒さも関係ない。このウェブ化により男女の働き方のボーダーレス化は加速度的に進みそうな気配だ。

 ある人材業界の営業職だった女性は、15年間子育てしながら楽しく働いてきたという。物腰が柔らかい人で、押しの強いタイプでは決してない。彼女自身、「確かに私はガンガン入り込むタイプではありません。押しが強いとかえって引いてしまう人もいます。私は営業の基本である、お客様の声に耳を傾ける、ひたすら聴くということに徹して信頼を築いてきました」と語る。

 体力問題がクリアできれば女子に営業は無理という理由はまた一つ無くなる。これは女子の劣勢を補うだけでなく、障がいのある人が働きやすい環境にも近づくということだ。つまりウェブ化はダイバーシティを飛躍的に進めるものになりそうだ。

 営業を経験しないと管理職登用はできないという会社が今も多い。一方で株主総会では女性役員がいるかどうかを株主から問われる時代だ。管理職から役員へ。キャリアのステップのためにも、まずは採用のところから女性の職種を柔軟に考えることが必要ではないだろうか。

(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/


     

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