ジョブ型雇用の欧州社会では、大学新卒の未経験者が簡単に雇ってもらえるようなことはない。あくまでもそのジョブができる人を雇う。そこで職業訓練が必要となり、多くの大学生は、在学中に長期間、低給与で実務をこなすインターンシップを行うと書いてきた。要はかの国のインターンシップとは「仕事を覚える修業」として存在する。日本のような物見遊山の生易しいものではない。実情を知らずに欧州を礼賛する人たちには厳しくクギを刺しておきたい。
一方で、未経験の新卒を進んで雇うような変わった風習を持つ我が国の場合、インターンシップで仕事を覚える必要はない。全く別の目的として存在する。主要なものを挙げておこう。
(1)覚醒目的。働いたことのない学生は、職業生活がどのようなものか見当がつかない。だからそれを知るためにインターンシップを受ける。それは、朝7時に起きて8時に家を出て、午後5時まで会社にいる、という生活を送るだけでも十分だろう。そこで、年配者がどのように苦労し楽しんでいるのか、などを見れば、職業生活というものも想像がつく。帰宅後に親たちを見る目も変わるだろう。こうした体験を大学生活の早期にするのは良いことだ。
(2)カタログ機能。これはワンデーインターンシップなどに代表される「超短期」のものが多い。本格的に企業や業界を学ぶ前に、世間にはどのような仕事があるのか、見ておこうというものだ。文字情報よりもわかりやすいし、対話型で質問もできる。しかも半日~1日程度と短いし、希望者の多くを受け入れてもくれる。
だから、就活の始まる前段階で、いろいろ勉強するために、これを活用するのは良いだろう。ただし、就活直前期になると、インターンシップとは名ばかりの「偽装説明会」を行っている企業もある。こうした抜け駆け行為は大学からも産業界からも不評を買っている。
(3)業界研究。カタログ機能でいくつかインターンシップを受けて、気に入った業界があったら、そこを真剣に掘り下げるために使う。こちらは最低でも2日以上、1週間程度滞在できるものをお勧めする。長い期間参加すれば、良いところも悪いところも見えるからだ。
(4)志望企業研究。志望が固まったら本格的に企業研究するために使う。志望企業の空気感を知るために、日数にこだわらず参加すべきだ。ただし、人気企業は選抜が厳しいこともある。それが「就職の予行演習」にもなるので、相場観がわかって良いだろう。
こんな感じで(1)~(4)の順で進めていけば、企業や業界の絞り込みもスムーズに進む。
(雇用ジャーナリスト)