知っておきたい就活情報

【就活のリアル転載】正直すぎる学生 選考状況、時には駆け引き 上田晶美(2020/8/4付 日本経済新聞 夕刊)(2020/08/11)


 「内定承諾は待ってもらえませんか? 就活を最後までやり切りたいんで」。内々定を出した学生からこう言われたIT(情報技術)企業の人事担当が、「これって、どう思いますか」とぼやいていた。

 確かに学生としてはたくさんの企業を受けて、納得できる内定がもらえるまでやり切りたいと思うのは当然だ。その気持ちはわかるが、それを内定をもらった会社の人事担当に言うのは別問題だ。キャリアカウンセラーに相談しているとでも勘違いしているのではないか。

 最近の傾向として、面接で多くの企業が「他の会社の選考状況を教えてください」という質問をしている。学生側に有利な売り手市場が続く中、複数内定を取る学生の「内定辞退」が増え、それを警戒する企業側の「オワハラ」が問題になってきたためだ。トラブルを避けるためにも、企業側が選考途中で学生の志望の度合いを聞きたい気持ちはよくわかる。

 以前だと学生は、事実でなくても「他社の内定はありません。御社が第1志望です!」と言ったものだ。そう言うのが当たり前であり、合格をくれた人事担当者への気配り、マナーだったように思う。

 ところが最近の学生を見ていると、素直に本当のところを何のためらいもなく話す。「御社の親会社の最終面接を控えています」や、「B社の最終選考に残っており、まだ迷っています」というように。それは「御社は第1志望ではありません」と言っているのと同じだ。

 まず前者の場合。グループ企業の子会社は人気がある。大企業の傘下にあり、倒産しないだろうという安心感のためである。だが、当然、親会社を受けていて受かったら、そちらに行くだろうと子会社の人事は思う。

 学生になぜそう答えたのかを聞いたら「グループ企業だから、連絡をとっていて隠していてもわかると思った」という。多忙を極める採用選考の途中で、グループ企業の人事同士が個々の学生の名前まで照合するということは、まず考えられない。

 また後者の場合は、他社の名前を言われて、良い気持ちがする人事担当がいるだろうか。当然、内定を出す順番は後ろにするだろう。

 昨今の就活指導では、面接の際の質問には正直に答えようという流れがある。嘘をつくのはよくないが素直にすべてを言えばいいというものでもない。あまりにも露骨に他社の名前まで言う必要はないと思う。就活は駆け引きの場でもある。

 特に人事担当は親身になってくれている人であっても、大学のカウンセラーではないことをわきまえる。大人になろう。

(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/


     

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