欧州のように未経験者への採用が閉ざされている国では、仕事に就くためには長期間過酷なインターンシップを経て仕事を覚える必要がある。だから、この仕組みが必要なのはわかる。対して、日本のように社会人未経験の新卒者を好んで採用する国で、なぜインターンシップが必要なのか。その最大の理由は、「紙やネットの情報ではわからない、リアルな情報を得る」ことだろう。
その際、多くの人が言うのは「仕事内容を知る」という目的だ。もちろん私はそれも大切なことだと考えている。たとえば色々世間を騒がせた問題はあったが、いまだに大手の広告代理店は学生から人気の的だ。ただ、学生はその仕事内容に甘い夢を見ている。芸能人やテレビ局の人と一緒に、CM撮影で海外に行けたりするのかな……などと考えているのだ。こうした夢から覚めるために、現実の仕事を見ることは大切だ。
ただ、そのためには大きなハードルがある。まず、人気の的になるような大手広告代理店のインターンシップ枠はとても小さい。就職活動と同様で、なかなか普通の学生はその恩恵に浴することができないだろう。
2つ目の問題は、超大手のインターンシップは、世間的イメージを高めるために、現実離れした「アトラクション」のような面白おかしいものになっていることが少なくない。
そうした企業では、新商品開発やCM作り、社内探検隊などのプログラムを用意していたりする。しかも、生の仕事現場にいる営業スタッフやバックスタッフとともにする時間は少なく、大部分をインターンシップ担当の人事や広報の社員と過ごす内容になっていたりする。正直、おためごかしの内容である。
私が以前、ワークスという人材雑誌で取材したときに学生が語っていた言葉が印象に残る。「とても良い雰囲気で楽しかった。印象はアップしました。でも実際、どんな苦労があるのか、どんな日常があるのかはホントよくわからなかった」。これでは何も意味はないだろう。
そこで、リアルな仕事を知るための良い方法を提案したい。それは、「志望業界の中小企業」のインターンシップを受けることだ。
中小なら学生人気も高くはないので、応募すれば受け入れられる可能性は高い。また、中小だと手の込んだ楽しいプログラムを作る余裕もないので、営業同行などの現場に近いものが多くなる。そして、同業界なら基本、仕事のアウトラインは同じだ。広告代理店であれば、媒体スケジュールや枠取りなども覚えられるだろう。そうしてリアルを体感したうえで、改めて志望すべきか考えてほしい。
(雇用ジャーナリスト)