知っておきたい就活情報

【就活のリアル転載】志望企業の社風知るには 取引先から聞く奥の手も 海老原嗣生(2020/8/25付 日本経済新聞 夕刊)(2020/09/01)


 前回のこのコラムで、「日本のインターンシップは、紙やネットではわからないリアルな情報を得る」ことが重要で、とりわけ仕事内容を知ることを重視する声が強いと書いた。それに対して私は「それも大切なことだ」と少々冷めた見方を示した。その理由を述べておこう。

 まず、企業の中にはたくさんの仕事がある。だから、「インターンシップで見た仕事」と違う職種に就いてしまうことが多々ある。憧れの広告代理店に入ったという学生が、配属されたのは経理だった、などという話も少なくない。だから「仕事だけ」を見ることに危うさを感じるのだ。

 そしてもう一つ。えてして企業は仕事のつらい場面を見せたがらないし、また、学生たちも憧れの企業に対しては「良くない部分」を見たがらないものだ。だから、正味、得るものはそれほど多くない。

 さらに言うと、仕事内容のアウトラインは、同業のライバル企業や中小企業でもそれほど変わるものではない。そのくらいをなぞるのであれば、前回に指摘した通り、規模など問わず「受け入れてもらいやすい」企業に行けばいい。

 私がインターンシップで本当に知るべきものとして考えているのは、「その会社の風土・社風・雰囲気」についてだ。これは文字情報では本当にわからないものだ。同業他社では仕事は同じでも、仕事の「進め方」が異なる。それは風土の違いがベースにあるからだ。

 さてこの「風土・社風・雰囲気」というものはどのようにすれば知りうるか。

 一番なのはやはり、リアルな営業や制作現場に同席させてもらうことだが、これはかなわないことが多い。もし、インターンシップで社内に立ち入ることができたなら、トイレでの会話や社食での動向、掲示板や社内報など、社員の「素」がこぼれ出るような細部を見ることを勧める。

それ以外にも、会社周辺の飲食店や居酒屋などで、志望企業の社員とおぼしき人たちの日常を眺めるのもよい。大学OBOGに聞くのもいいだろうが、面と向かうと自社のことを悪く言う人はいないので、これにはあまり期待できないだろう。

 奥の手がある。志望企業の「取引先」にインターンシップで行くのだ。

 彼らは自社ではないから、いくらでもその企業について話してくれる。そして、たいていそうした取引先は、志望企業のライバル社とも関係があるので、比較しながら社風を語ってくれる。こうした取引先で、学生人気が高くないところは、インターンシップ先としてねらい目だ。

(雇用ジャーナリスト)


     

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