前回のこのコラムで、「日本のインターンシップは、紙やネットではわからないリアルな情報を得る」ことが重要で、とりわけ仕事内容を知ることを重視する声が強いと書いた。それに対して私は「それも大切なことだ」と少々冷めた見方を示した。その理由を述べておこう。
まず、企業の中にはたくさんの仕事がある。だから、「インターンシップで見た仕事」と違う職種に就いてしまうことが多々ある。憧れの広告代理店に入ったという学生が、配属されたのは経理だった、などという話も少なくない。だから「仕事だけ」を見ることに危うさを感じるのだ。
そしてもう一つ。えてして企業は仕事のつらい場面を見せたがらないし、また、学生たちも憧れの企業に対しては「良くない部分」を見たがらないものだ。だから、正味、得るものはそれほど多くない。
さらに言うと、仕事内容のアウトラインは、同業のライバル企業や中小企業でもそれほど変わるものではない。そのくらいをなぞるのであれば、前回に指摘した通り、規模など問わず「受け入れてもらいやすい」企業に行けばいい。
私がインターンシップで本当に知るべきものとして考えているのは、「その会社の風土・社風・雰囲気」についてだ。これは文字情報では本当にわからないものだ。同業他社では仕事は同じでも、仕事の「進め方」が異なる。それは風土の違いがベースにあるからだ。
さてこの「風土・社風・雰囲気」というものはどのようにすれば知りうるか。
一番なのはやはり、リアルな営業や制作現場に同席させてもらうことだが、これはかなわないことが多い。もし、インターンシップで社内に立ち入ることができたなら、トイレでの会話や社食での動向、掲示板や社内報など、社員の「素」がこぼれ出るような細部を見ることを勧める。
それ以外にも、会社周辺の飲食店や居酒屋などで、志望企業の社員とおぼしき人たちの日常を眺めるのもよい。大学OBOGに聞くのもいいだろうが、面と向かうと自社のことを悪く言う人はいないので、これにはあまり期待できないだろう。
奥の手がある。志望企業の「取引先」にインターンシップで行くのだ。
彼らは自社ではないから、いくらでもその企業について話してくれる。そして、たいていそうした取引先は、志望企業のライバル社とも関係があるので、比較しながら社風を語ってくれる。こうした取引先で、学生人気が高くないところは、インターンシップ先としてねらい目だ。
(雇用ジャーナリスト)