この連載を5年続けていて、就活関連のデータに触れた回は必ずと言っていいほど、大きな反響が寄せられるのだが、その気持ちは痛いほどわかる。就活の実態はなかなか目に見えないものだ。にもかかわらず、一言居士があれやこれや分かったようなことを言うから、学生も教職員も親御さんも悩みが尽きないのだろう。
その根源には2つの厄介な問題がある。まず多くの大人たちはそれなりに働いたことがあり、キャリアについて一家言持っていること。そしてもう一つは、学生にとっては就活は一回きりで、色々学んでよくわかったころにそれは終わる。そして次学年のまっさらな学生が最初からまた始める。つまり、いつでも学生側(と多くの親御さん)は「素人」の集まりなのだ。
こんなストレスがたまる状況下にあるから、客観的なデータと、そして過去の事情を含めた解説を求めているのだろう。
これからしばらく、徹底的にデータで就活を「見える化」していくことにしたい。データの宝庫である「就職みらい研究所」の就職白書を参考にした。
手始めに前回まで続けてきたインターンシップ(以下IS)について、まとめてみたい。
まず参加者が多かった月だが、2021年卒予定・20年卒ともに2月となっているが、これは1dayを利用した実質会社説明会だろう。本物のISだと8月が最多となり、参加学生の25%前後がこの月に集まっている。ちなみに、ISの選考で落ちた場合、本選考では不利に働くかは気になるところだが、「選考対象としなかった(不合格とした)」企業は21年卒9.6%、20年卒7.1%とごく少数となっているので、安心してほしい。
ISの効果について数字で見てみよう。書類通過率は、21卒(参加24.9%、不参加者7.7%)、20卒(参加26.5%、不参加16.9%)といずれも参加者がかなり高い数字となっている。社の内情がわかり応募動機などのポイントが端的なこと、合わない学生が応募しないことなどで通過率が上がるのだろう。
内定した企業に対する納得度で見た場合、参加者は79.8%に対して不参加者は67.4%。また入社後の継職意向者はIS参加者、転職意向は不参加者が多くなるなど、ミスマッチ度合いに違いが見て取れる。
ただし、入社後の成長を見た場合、IS参加者は早期で若干評価が上回るが、2年後以降はむしろ不参加者の方が数字が良くなっており、総じて大差はついていない。つまり、早期のミスマッチ防止にはある程度寄与しているが、長期の成長や業績とはあまり関係がないようだ。
(雇用ジャーナリスト)