今回は、来年の就活を占う意味で、今年の就活(2021年卒)が新型コロナウイルス感染症のまん延により、どう変わったかを見ておく。21年卒の場合、2月中旬までは例年通りの活動だったが、2月末に首相から学校休校や自粛要請が発せられ大きく風向きが変わった。その結果、3月の求人広報の解禁時点で通常なら活発になる合同説明会が中止となる例が多々見られた。これが変化の第1弾。
続いて4月7日に緊急事態宣言が発せられ、それが5月25日に首都圏で解除されるまでの期間。対面するリアルな接触が困難になった。これが第2弾。
この結果、ウェブを使った就活が浸透したが、それでもスケジュール通りにプロセスが進まず採用に遅れが生じている。こうした点を就活みらい研究所のデータで振り返ってみよう。
まずは企業側が採用活動で重点を置いていることについて。ウェブを通じた企業説明会が43.1%(前年比31.9ポイント)、ウェブ面接が45.9%(同39.6ポイント)と大幅に伸びている。これは通年を振り返ってのことだが、どの時期から大きく変化が出たのかを、学生の活動データから確かめてみる。
企業の説明会への参加回数は、2月以前は足を運ぶリアルが3.37回、ウェブは0.67回だった。3月上旬にはリアルが1.83、ウェブが2.31と逆転し、それ以降どんどんウェブの比率が高まっていった。面接では3月中旬以降に逆転している。自粛要請・緊急事態宣言が非常に大きかったことがわかる。
緊急事態宣言の解除以降もウェブによる選考は続けられたようで、5月上旬の企業向けアンケートでは最終面接までウェブで行う予定と答えた割合が3割を超えていた。企業は単にコロナ対策としてだけでなく、誰とでもすぐに接点が持てるウェブの便利さに気づき、今後もこの手法を使い続けるだろう。
一方で、やはり応募学生の素を知るにはリアルの対面が重要という声も多い。そこで、今後はウェブとリアルをバランスよく交ぜた形が考えられる。例えば、地方の学生の面接対応増や、セミナー枠拡大などにウェブを、人物把握の要諦となる2次面接以降をリアルにしていく企業が増えそうだ。
こうした曲折を経たため採用は遅れ、学生の内定率は5月1日以降は前年割れとなった。結果、企業側も昨年よりも採用予定数は減っているのに充足できない。8月時点で採用活動を終えるという企業の割合は昨年の54.5%に対して今年は41.7%と大きく落ち込んでいる。これは内定が取れない学生には一つの朗報だろう。6割近くの企業にはまだ就活のチャンスが残されているということだ。
(雇用ジャーナリスト)