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【就活のリアル転載】面接・説明会のウェブ定着 学生は対面重視、バランスを 海老原嗣生(2020/10/27付 日本経済新聞 夕刊)(2020/11/10)


 前回のコラムでは、コロナ禍の中で就活は説明会も面接もウェブが主役になりつつあると書いた。ただ、こうした変化は学生たちに受け入れられていたのだろうか。この点について、また、就職みらい研究所のデータを使って確かめていきたい。

 まず、学生たちが「入社意欲が高まった機会」のトップに挙げたのが、「面接など対面での選考」で60.2%と他を引き離している。「ひきつける」ためには対面するリアルの接点をなおざりにはできないとわかる。

 続いて、具体的な場面ごとに聞いた「ウェブと対面とどちらがいいか」について見てみよう。「自分の話が伝わっていると思う」は、ウェブが良い(よい・どちらかというとよい)が8.5%に対して、対面が良いが75.9%と、対面の圧勝。一見ウェブの方が良く見えそうな「服装を気にしなくてよい」や「面接を受ける場所」についてもウェブが良いは過半数には達していない。

 対面での面接なら、場所も服装も指定されており周囲の学生の状況もわかるが、ウェブは自分だけ一人の場で、しかもルールもないから困るのだろう。こうしたことが相まって総合評価では、ウェブが良いは26.1%に対して、対面が良いが48.1%と大幅に上回っている(残りは「どちらでも同じくらい」が25.8%)。

 今度は、ウェブ面接について困った点を見てみよう。一番は「自分の話が伝わるか」で33.6%の経験者がそう答えている。続いて「通信環境」(声が途切れたり、画面が消えたりしないか)が23%になる。そして、「視線をどこに向ければ良いか」が17.8%。とりわけ、面接官が複数いる場合、どこを見ればよいかわからないという声が強い。これに加えて「カメラやマイクなどのマナー」(6.7%)、「ウェブ面接を受ける場所」(4%)となる。このあたりは、大学からの学生指導が必要な項目だ。

 一方企業側は前向きだ。来年はウェブ面接を増やすが27.4%、今年並みが28.6%で、対面を増やす(13.2%)を大きく上回っている(30.7%が「わからない」)。

 地方の学生対応や、面接・セミナー受け入れ数の増加の決め手として、ウェブを活用していきたいところなのだろう。この点で学生と企業に差がみられるのが心配だ。その一部については、大学側の指導により解消するだろう。しかし、デジタル世代の若者であっても、リアル接点はやはり大切だ。広く薄く簡単にというウェブの良い面と、深く濃くという対面の良さをうまくバランスしていくことが、企業の採用活動には求められることになりそうだ。

(雇用ジャーナリスト)


     

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