知っておきたい就活情報

【就活のリアル転載】エントリーシートのポイントは? 文章表現より中身が大切  上田晶美(2020/11/24付 日本経済新聞 夕刊)(2020/12/01)


 
 「そちらではエントリーシートの添削はしてくれるんですか?」と私の会社に電話が入った。名前も名乗らぬ、就活生の母親らしき人からの高飛車な電話だ。締め切りが迫っているのか、わが子の「エントリーシートの添削」をしてほしいと焦っている様子がうかがえる。添削というのは、一般的には文章を正しく直すという意味で用いる言葉であるが、この言葉はくせものである。

 結論から言うと、私はエントリーシートについての相談にはのるが、添削だけならば引き受けられない。つまりメールかFAXでエントリーシートがポンと送られてきても、よくある通信講座のような漢字の間違いや「てにをは」の添削だけなら引き受けられないということ。

 なぜなら、エントリーシートの添削には2段階あると考えているからだ。文字通り、誤字を直したり、漢字の間違いを訂正したり、「てにをは」を整えるアドバイスや日本語としての文章表現を正しくする、形を整えるいわゆる添削は2段階目である。就活のエントリーシートは、文章表現が正しければそれだけで受かるというものではない。必要条件ではあるが、十分条件ではないのだ。

 それよりも大切な第1段階は、書いた内容、中身の検討である。例えば、自己ピーアールの中身がその会社の求める人材要件に合致しているかどうか。A社はチームワークがとれる人を求めているのならば、それに沿った長所を書いていなくては受からない。またB社の求める能力はレジリエンス(しなやかな適応力)なのであれば、その力を発揮したエピソードがほしい。エントリーシートはその会社の求める人物像を押さえて、本人の長所と照らし合わせなければ、第2段階の添削には移れない。

 第2段階に入った添削でも、「てにをは」だけでなく、具体的なエピソードを書いたり、数字を用いるなどの伝わりやすさを、聞き取りながら一緒に肉付けしていくことが必要になる。その過程で本人の長所がその会社にマッチしていなければ、志望企業について再検討することもあるだろう。会社に合わせるのでなく、本人に合った会社を探さなくてはならない。

 エントリーシートが課される目的はそもそも何なのか。単に国語力を試しているわけではないし、エントリーシートだけで内定とはならない。「次の段階である面接に呼ぶべき人材かどうか」を見極める資料であり、しかも面接はエントリーシートに書いたことに基づいて進んでいく。エントリーシートの「添削」にはカウンセリングが不可欠である。

(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/


     

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