不況で就職が買い手市場になると、学生たちは苦しい立場に追いやられる。そうしたときにはいつも、過去に失敗した対策が打ち出される。前回のコラムではそんな一例として「既卒3年新卒扱い」について書いた。今回は「通年採用」を取り上げてみたい。
日本ではいまなお事実上の採用解禁日が定められており、足並みをそろえて多くの企業が同じ動きをする。だから学生は、「ある時期」を逃すと就職機会をなくしてしまう。そうした非合理かつ学生本意でない慣習を取り除こうという話が、もう何度も言い続けられた。
ただ、通年化するとどうなるのかという話は、真剣に考えられたことがない。
メガ外資企業の多くは、日本参入直後であれば新卒採用慣行になじみがないため、えてして通年採用を打ち出す。私の知るところでは、かつてのマイクロソフトやシスコシステムズなどがそうだった。ただ、数年でそれをやめる。
それは当然の帰結だった。秋口まで採用広報を続けていると何社も不合格となった学生が、わらにもすがる思いで大量に応募してくる。企業側としては、書類選考や面接などで彼らに対応するものの、それでも選考にかなう学生が現れない。非効率だということでやめてしまうのだ。
結局、道理にしたがい社会は動く。日本の学生はある程度、納得のいく企業から内定をもらえば、そこで就活を終える人が多い。とすると、通年で窓口を開けていたとしても、応募者は内定が取れない学生が圧倒的多数となってしまうのだ。
実は同じことは企業側にも言える。通常、企業は採用予定数を確保すれば窓口を閉じる。採用基準にかなう学生が応募しているのにその段階で採用せず、秋や冬まで枠を残している企業はないだろう。とすると、通年で採用をしている企業は採用に弱いところが多くなる。(ただし、名のある人気企業も理系に関しては秋冬まで採用を続けている。エンジニア採用に限れば、人気企業でも「採用弱者」に他ならないからだ)
結局、こうしたことが相まって、秋冬の新卒採用市場というのはどうしても、人気企業とブランド大学の学生が残りにくい構図になる。こうした状況になって、ようやく普通の中小企業と普通の大学生のカップリングが進む。これが世の習いとなり、通年採用の旗振りはなかなかうまくいかない。
ちなみに、通年採用をやめたメガ外資は、えてして、超早期採用へと傾く。それが採用効率を上げる最良の手だと気づくからだ。外資の合理性には驚くべきものがある。
(雇用ジャーナリスト)