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【就活のリアル転載】卒業か留年の二択でない 志望動機見つめ、新たな軸を 上田晶美(2020/12/22付 日本経済新聞 夕刊)(2021/01/05)


 「航空会社の募集がなかったので、大学を卒業せずに留年しようと思います」。小さいころから客室乗務員にあこがれていたというT子さんから相談があった。募集中止となった今夏から、いま一つ就活に身が入らず、内定は持っていないため、留年したいという内容だった。T子さんの落胆はわかるし、気の毒ではあるが、留年したらどうなるのかを少し考えてみよう。

 国内航空会社は2022年卒採用でも、客室乗務員の募集を見合わせる予定と聞いている。1年留年しても採用はないというのが、現在の見通しである。つまり2年留年しないと応募できないということだ。これはあまり現実的とはいえない選択である。2年あればほかの道もいろいろと考えられる。大学院の進学は既に大半は試験が終わっているが、専門学校などで勉強することも可能だろう。とにかく留年か卒業かという二者択一とはいえない。

 そもそも航空会社の客室乗務員というのは、新卒でなくても既卒転職でも応募できる職種である。しかも、実際に転職して入った人から聞いたところ、実際、昇進の際に新卒と転職組になんら差異はないということだ。T子さんは今年の新卒就職は残念だったが、2年後以降に既卒採用にチャレンジする道はあるのだ。

 さて卒業するとして、ここからの就職を選ぶ道もまだ残されている。客室乗務員への転職に役立つような仕事を探してみてはどうか。彼女のモチベーションも考え、そもそもの客室乗務員の仕事に対するあこがれの要素を分解してみよう。

 志望してきた動機は1つではないはずだ。旅や飛行機、空港などの非日常性や、お客様にサービスするというホスピタリティーなどがあげられた。1つ目がかなわない今、2つ目はどうだろうか。世の中にホスピタリティーを必要とする仕事は数多い。ホテルやデパート、比較的高額商品の売買にも高度なホスピタリティーとサービスが求められる。不動産、住宅売買なども当たるのではないか。こちらを新たな軸として、考えてみてはどうかと勧めた。

 こうした考え方は客室乗務員だけでなく、他の業種にもいえることだ。コロナ禍で採用が極端に少なくなった業界の場合、希望していた動機の要素を分解してみて、そちらを新たな軸として探し直してみるといい。

 12月といっても卒業までにはまだ3カ月余りある。募集している会社はあるし、活動し続けることは可能だ。新たな視点でもう少し、就活を続けてみてはどうだろうか。留年して先延ばしにしても急に好景気にはならないと思われる。

(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/


     

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