前回まで企業側の新卒採用ルールについて、これをなくして自由化すると大変なことになると、過去の歴史を振り返り書いてきた。採用ルールはしっかり維持し、学業阻害が一番小さくなるように設定すべきだろう。今回は、現状の課題点と対策について考える。
今の就活ルールは3月広報解禁、6月面接解禁というスケジュールだが、学業阻害が大きい。大学4年の前期がまるまる企業説明会と面接で埋まってしまうからだ。前期試験なども影響を受け、理系は大学院入試や卒業研究のテーマ決めの時期とも重なる。
6月面接解禁につながる背景には就活の早期化の見直しがあった。2010年に日本学術会議が早期化を是正する旨の提言をまとめたのが発端だ。その数年前に企業が2年時の冬採用に動き、問題点が多く4年生の4月面接開始へと修正されようやく落ちついた。それが、産学官の思惑違いから、もう一段の後ろ倒しへと議論が進み、6月面接解禁へとつながっていった。
4年4月面接解禁というのは実に合理的にできていた。企業は解禁直前の2~3月に説明会を開催する。就活で最も時間をとられる説明会が春休みにすっぽり入るのだ。そして、超大手の面接~選考はまだ春休み中の4月1日に始まり、GW前には終わる。4年のカリキュラムへの抵触はいたって少ない。
4月解禁の場合は広報自体は12月に開始となるが、その後すぐに後期試験があるため、学生は試験が終わるまで動けない。だから、他社より早い採用を目指して動こうとする企業も今よりはるかに少なかった。
現状の6月解禁だと、学生にとって春休みは特にすることがない。そうなると企業はここで採用を始めてしまう。氷河期が騒がれる今冬の場合、不安を抱え2月に就活を開始する学生は多くなるだろう。それからずっと就活の山場は続く。この問題にこそ対処すべきではないか。
また、採用広報の解禁については現状では3月だ。新卒求人は就職ナビサイトに3月までは掲載はできないが、「インターンシップ」ならば広報が可能になる。ナビサイトのインターン募集ページには、この時期でも広告掲載が可能であり、採用を先行させたい企業はそれを使っている。
こうしたことは、行政が本気になれば是正できないことはない。改正された職業安定法ではその取り締まり対象を「求人情報提供者」全般へと拡大している。ナビサイトのあり方を見直すことも必要だろう。学業阻害しない就活ルールを定めていくため、面接や広報解禁の現状について再考が欠かせない。ようは行政のやる気の問題だ。
(雇用ジャーナリスト)