就職氷河期とはいったい、どのようなものだったのか。その実態にデータで迫ってみることにしよう。まず、1990年代から2000年代にかけて、大きな不況が3回あった。1度目は91年から始まるバブル崩壊。続いて97年のアジア通貨危機。そして3度目が、01年に起きたIT(情報技術)バブルの崩壊だ。
ただ、就職氷河期はこうした不況とは若干タイムラグをともなって訪れる。理由の一つは、企業は就活時期の前年夏には採用枠を固めていることが多く、その後に景況悪化しても採用数は絞らない例が少なくない。もう一つは、採用数を絞った場合でも、それが実際の入社者として数に表れるのは1年近く後になることだ。
結果、景況のボトムから2年くらいしたところで入社者数の底が訪れる。
バブル崩壊後の最悪期であれば96年卒、アジア通貨危機の時期であれば00年卒、ITバブル崩壊期であれば03年卒となる。
その状況はまず新卒採用倍率に表れる。これは卒業生1人当たりに何件求人があったかを示したものだ。バブル絶頂期に2.86まで上がったそれは、96年卒の頃には1.08、00年卒で0.99、03年卒では1.30まで下がっている。
続いて卒業時点で進路が決まっていなかった学生数を見てみよう。進路未定者と一時的な職に就いた人(フリーター)合計でカウントすると、96年卒者は9万880人(卒業生に占める割合で15.3%)。同様に00年卒は14万3716人(26.9%)。03年卒では14万7929人(27.1%)。最悪期には4人に1人以上の割合で、広義の進路未定者があふれていたのだ。
景況が改善して、しかも少子高齢化で若者を求める機運が高まった18年卒組だと、進路未定者数は4万8538人(8.6%)となっている。最悪期と比べて、実数で3分の1以下であり、卒業生12人に1人程度だ。昨今の売り手市場感がわかるだろう。
ただ、ここで2つ注意してほしいことがある。氷河期の最悪期である3つの年を見ても、就職できた人は、32.5万人、30.1万人、29.9万人もいることだ。進路未定者よりも圧倒的に多いという事実がある。「氷河期になると誰もが就職できない」というのは考えすぎだ。
そしてもう一つは、昨今の好況期でも、5万人近くも進路未定者がいるという事実。売り手市場という言葉にそそのかされて誰でも就職できるような気持ちになるが、それも誤解ということだ。このあたりは、新卒一括採用という日本型就職システムが持つ、大きな問題の一つといえるだろう。
(雇用ジャーナリスト)