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【就活のリアル転載】客室乗務員には「ヒゲ」がない あこがれの職業の「話し方」 上田晶美(2021/1/26付 日本経済新聞 夕刊)(2021/02/02)


 先日参加したビデオ会議システム「Zoom」によるプライベートの新年会で、ある女性の近況報告にしびれた。話の内容というよりも、その話し方の美しさに驚いた。初対面ではないのだが、彼女があらたまって人前で話すところを見たのは初めてだった。

 Zoomで一人ずつ近況報告をするのはまるでスピーチのようだった。普段通りに話す人もいれば、緊張して苦労する人もいる。そんな中、彼女の話し方はまるで流れるようだった。私は講義や研修で講師をする仕事がら、人の話し方が大変気になる。あとで聞いたら、彼女は元キャビンアテンダントなのだそうだ。

 確かに、私の会社にいる100人ほどの講師・カウンセラーの中にも元キャビンアテンダントが3人いて、どの人も入ってきた時から話し方はとても流ちょうだった。

 何が違うのかというと、一つは文字通り流れるように話す点。話し始めから終わりに向かって上から下へ流れるように話すのが、日本語では美しいとされている。途中の助詞を伸ばしたり上げたり、最後の語尾が上がるのは聞きづらいものだ。

 二つ目はヒゲがないということ。ヒゲと言っても顔などのムダ毛の話ではなく、ことばのヒゲのことだ。

 ふつうは話し方のクセで「えー、あのー」などの無駄なことばを挟んでしまうもの。そういった無駄なことばを専門的に「ことばのヒゲ」と呼ぶ。元キャビンアテンダントの彼女にはその「ことばのヒゲ」がなかった。ことばのヒゲがないと、こんなにきれいに聞こえるのだと、改めて合点した。

 国内航空会社のキャビンアテンダントの訓練期間は約3カ月。保安やサービスの研修の中には話し方の講義もある。機内放送だけでなく、お客様との話し方も含め、最高のサービス、ホスピタリティーを提供するためである。所作や気配り、それに話し方までも磨いているのだ。だからこそ、キャビンアテンダントは多くの学生にとって憧れの職業であり、長年の人気を維持しているのだろう。

 こうした話し方の訓練はアナウンサーならば当然クリアしている。ここまでは話すことのプロの話。一般の就活生はそこまでの完璧な話し方を目指さなくてもいい。面接では話し方の流ちょうさよりも話の中身の方が重要である。ヒゲがあってもいいし、方言が出るのも良い。

 コロナ禍で航空業界は大打撃を受けている業種の一つだ。だが未来永劫(えいごう)、飛行機がなくなるわけではない。航空業界を目指す学生の皆さんにエールを送りたい。

(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/


     

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