就職氷河期の2000年と03年大卒者は、実に4人に1人が卒業時点で進路未定となっていた。背筋が寒くなる話だろう。ただ一方で、就職できた人は、それぞれ30.1万人、29.9万人と進路未定者よりも圧倒的に多い。だから「誰もが就職できない」ということはないと前回書いた。
こうした話に対しては、「いやいや、就職できたとはいえ、好況期であれば行きたくもないような企業ばかりなのだろう」という突っ込みが入りそうだ。現実はどうなっているか、詳しく説明することにしよう。
厚生労働省の雇用動向調査から大企業(従業員1000人以上)の新卒採用数を調べると、2000年が8.7万人、03年が9.4万人となっている。バブルのピーク期が14.6万人だったので、おおよそ4割減だ。
さらに的を絞って人気ランキング100位以内の企業の採用数を推定してみよう。これは、就職四季報で採用数を公表している企業の平均値から私が推測した数字となる。こちらは両年とも1万3000人程度となる。08年の好況期が2万7000人程度なので、景況により半減した程度といえるだろう。
つまり、不況期といえども、大手企業や人気企業はそこそこ採用を続けている。それは好況期と比べて半減、通常期と比べれば3割減程度だろう。だから、今までならエクセレント企業に入れた人が、不況になると全く聞いたこともない零細企業しか入れない、などということは断じてない。
現実的に起きていることは、通常期だと第2志望くらいに入れるところが、好況期だと第1志望に入れ、逆に不況期だと第3志望にしか入れない、といった感じで「1格」程度の上下変動だろう。ミクロ的に就職指導をするのであれば、この「1格の上下変動」をしっかり教えればいい。
不況期になると、有力大学も中堅大学も、卒業生の就職先が1格ずつランク落ちするという玉突きが起きる。これが連綿と続くと、最後に就職に弱い大学の卒業生がはじき出されて無業になる。こんなグラデーションの中で起きるのが新卒無業といえるだろう。
リーマン・ショックから東日本大震災あたりに起きた「ミニ氷河期」に、京都の就職の弱い大学で教えていたことがある。公的データでみると当時の進路未定者比率は平均19%程度。にもかかわらず、私のいた大学では6割にも及んでいた。
有名・中堅大学では就職氷河期といっても「1格落ち」ですむところが、就活に弱い大学では無業となりかねない。痛みが弱者に寄せられる現状があってはならない。
(雇用ジャーナリスト)