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【就活のリアル転載】氷河期の統計、実態映さず 内定率高く出る調査に注意 海老原嗣生(2021/2/16付 日本経済新聞 夕刊)(2021/03/02)


 就職問題、とりわけ氷河期について語るときに、とても悩ましい公的データが存在する。「大学等卒業予定者の就職内定状況調査」だ。厚生労働省と文部科学省の2省が共同で実施する調査だけあって、メディアに登場する機会も多い。初回が1997年度で24年目に入る由緒ある調査であり、参考にしている識者も多い。それだけに、この調査が実相を示していない点については残念に思う。

 過去24回の調査で卒業時点(4月1日)での就職内定率を見ると、そのボトムはリーマン・ショックの後の2011年だ。その時の内定率は91.0%。ちなみに、就職氷河期にあたる2000年と03年は、卒業時点での内定率は91%と93%だ。比較するために示しておくと、過去最高値は18年と20年でともに98%を記録している。過去最低と過去最高でたった7ポイントしか差がないのだ。

 この数字をうのみにしたりすれば、「氷河期だって9割以上の学生は就職できたんじゃないか」と安心する人が多くなるだろう。これではとても、当事者の痛みは理解されまい。

 前回のコラムで示したように、2000年、03年においては、卒業時点で進路未定者が27%もいたのだ。なぜ、こんなにも実相とかけ離れた「就職内定状況」が公表されてしまうのか。それは、調査方法に大いに問題があるからに他ならない。

 まず、調査対象となるのは(年度によって若干異なるが)、約60校となる。全大学は750校ほどだから、その1割にも満たない。しかも60校のうち、国公立大学が24校も占める。実に4割だ。

 実際には全大学に占める国公立の割合は2割程度で、もっと少ない。氷河期の痛みは就職に弱い大学にこそ色濃く表れる。その状況が反映されにくい構成といえるだろう。

 さらに大きな問題は、この内定率の分母を「就職希望者」としていることだ。就活終盤にもなると、あきらめて希望を取り下げる学生も増えるし、就職課と連絡が取れなくなる学生も多い。そうした学生をノーカウントにしているのだから、いやがうえにも数字は高止まりするだろう。

 一方で、進路未定者の27%という数字は、学校基本調査から出している。こちらの調査は、文科省がすべての大学に学生全数の把握を厳しく求めており、未確認が3%を超えようものなら大目玉を食らう。だから大学によっては、進路の調査票と引き換えに卒業証書を渡したりしているのだ。

 両者を比べればどちらが実態を表しているかは、言わずもがなだろう。氷河期の実態は正確に捉える必要がある。

(雇用ジャーナリスト)


     

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