知っておきたい就活情報

【就活のリアル転載】コロナ下、未熟な志望書多い 企業が知りたいこと熟考を 上田晶美(2021/3/16付 日本経済新聞 夕刊)(2021/03/23)


 「『学チカ』で高校受験を頑張った経験をアピールしたいので見てもらえますか」。大学の女子学生からの就活相談だ。「学チカ」とはエントリーシートで最も多い質問の「学生時代、力を入れたこと」の短縮形。就職試験の情報公開が解禁された3月は各社のエントリーシートの締め切りが目白押しで、学生からの相談や添削依頼が殺到中だ。その中の質問の一つである。

 「大学時代、力を入れたこと」と質問しないのは、短期大学や専門学校を除外することになりかねないため「学生時代」とまとめて表現していると思われる。大学が「学生」なのに対し、中学、高校時代は「生徒」である。その名の通り「学チカ」は「生徒時代」のことを聞いているのではなく、各種学校も含めた「大学時代」の話をアピールしてほしいのではないか。

 冒頭の彼女の場合、高校受験ということは中学時代の話になる。中学まで遡るのはあまりお勧めできない。「その後は頑張ったことはないのか」という疑問が残るからだ。

 では、大学受験の話題ではどうか。希望の大学に入るという目標達成のために、こつこつ努力した継続力や忍耐力は困難を乗り越えた貴重な経験だとは思う。しかし、この話題もあまりふさわしいとは言えない。仕事は結果が大事である。受験勉強のことは大学名という結果が出ているので、それで十分にわかるといえる。採用試験には筆記試験もあるので、勉強した成果はそちらで発揮するのがよいだろう。

 それでは中学や高校の話題が全くダメかというと、そうとも限らない。会社での働きぶりを想像できるものであればよいのではないか。中学時代から10年間続けてきた部活動というのであれば継続力がアピールできる。しかもこの1年間はコロナ禍で大学の部活動はあまり活発に行えているとは言えないため、高校時代の部活動の話に遡るのは許容範囲と思われる。

 こうしたエントリーシートの相談を見るにつけ、今年はコロナ禍で大学の対策講座が減ったり、オンラインになったりして、例年ほど指導が行き渡っていない感がある。採用側からは、キャリアセンターの手直しがない方が本人の素のままの実力を知ることができてよいという声もあるだろう。だがそれで前年の学生と比べられるのも困る。

 採用試験で会社側は何を見たいのかを、今一度しっかり考えてテーマを選ぼう。本人にとって過去の大事な経験が必ずしも評価されるとは限らない。アピールがひとりよがりになっていないか、再確認してほしい。これは就職のための試験だということを忘れずに。

(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/


     

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