就職氷河期について、誰もが最も関心を寄せることは何か。大学新卒時に進路未定だった人たちは、その後どうなったか、ではないだろうか。
この点について、実は公的データで調べることができる。5年ごとに実施される総務省の就業構造基本調査では、学歴、卒業年次、初職(正社員)に就いた年などがわかるのだ。ここから氷河期とされた2000年大卒者の、その後について見てみよう。
まず、大卒初年度で正社員になれた人は27.6万人。文部科学省の学校基本調査の数字(30.1万人)とは若干ずれがあるが、誤差の範囲としておこう。
その後、初めて正社員になれた年次とその数を押さえていく。卒業後1~3年で4.3万人。同3~5年で1.36万人。同5~10年で1.63万人。同10年以上だと1.18万人。卒業後1年を経過した後で正社員になれた人の合計は8万4700人に及んでいる。
さすがに新卒年次の27.6万人と比べると少なく見えるが、それでもかなり多くの人が正社員になれていることがわかる。例えば卒業後5~10年というと、浪人留年なくストレートで入社した人でも27~32歳、10年以上だと32歳を超えている。そうしたなかで、多少遅れながらも正社員になれた人が万単位で存在することには、「日本も案外捨てたもんじゃない」という気持ちが湧くのではないか。
ちなみに、この就業構造基本調査は、サンプル調査を基に母集団を推計したものなので実数調査ではない。そのため「本当は違うのではないか」「この年だけの例外値」など、疑いの目で見られることもある。そこで、同じく氷河期の03年卒者の数字も算出してみたが、傾向はほぼ同じ。新卒から1年を経過した後に正社員となれた人は合計で7.8万人であった。
こうした数字を見るにつけて「卒後3年新卒扱い」を改めて無意味だと思ってしまうのだ。学生が就活に本腰を入れてかからず、大手企業への就職に固執したまま就活をすぐ諦める悪い風潮がまん延してしまう。実際には、就職に弱い大学の卒業生の多くを、名前の知られていない中小企業が受け入れている現状がある。新卒では応募者が集まらないから、いつでも既卒者を受け入れているのだ。あえて「卒後3年新卒扱い」など打ち出す必要はないだろう。
こうした形で無業者は減っていく。18年の労働力調査では40~44歳の非正規雇用は210万人で、非正規比率は29.9%。このうち男性で見ると31万人であり、非正規比率は8.2%にとどまる。正社員になる道は、けっして閉ざされているわけではない。
(雇用ジャーナリスト)