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【就活のリアル転載】「内定承諾書」いつ、なつ印? 熟考する時間しっかり確保 上田晶美(2021/3/30付 日本経済新聞 夕刊)(2021/04/06)


 「内定した会社から内定承諾書を出してくださいと言われたのですが、なつ印しないと内定は取り消しになりますか? まだ就活は続けたいのですが」。早々と内々定をもらった女子学生から相談を受けた。

 せっかく内々定をもらったというのに浮かない顔をしているのだ。今回は学生を悩ませる、この「内定承諾書」について考えてみる。

 内定すると電話などで通知されるだけでなく、会社から「内定通知書」が送られてくる。そこに「内定承諾書」が入っており、なつ印して返送するという手順をとる会社が多くなってきた。

 数年前まで、内定は口頭で伝える、いわば「口約束」ですんでいた。「内定承諾書」という「労働契約書」を交わすことになったのは、内定辞退のトラブルを起こさないためだ。「終われハラスメント」、いわゆる「オワハラ」を避ける意味合いが考えられる。

 「オワハラ」は会社側が就活を終えることを条件に内定を出すことで、学生の職業選択の自由を阻む内定拘束である。もちろん、してはいけない行為だ。初めて社会人になるという大事な時期に会社がハラスメントするというのはもってのほかである。入社後に早期退職などのミスマッチを生む恐れもあるため、学生はじっくりと企業選びをする期間がほしい。

 そう考えると、今この3月の時期に「内定承諾書」になつ印するというのは、時期尚早といえるだろう。内定解禁日は10月1日なのだ。

 「労働契約」には互いの権利を守るという意味合いが含まれている。学生を拘束すると同時に、会社にも勝手な内定取り消しはできないことを確約するものだ。

 当然、規定に反すれば契約は解除になるが、学生側からは自由に解除できる。解除を申し出て2週間後には、自動的に解除されるのだ。その意味では、むしろ学生側に優位な契約である。

 とはいえ契約書であるからには、むやみやたらと承諾してなつ印してもいいとはいえない。悪質な辞退をした場合、もしくは辞退を告げなかった、または入社間近になって告げた場合、どうなるか。

 大学側にクレームが入り、こじれると後輩たちの就活に迷惑をかけないとも限らない。契約解除、すなわち内定辞退をするときは、早めにマナーよく通知するのが鉄則だ。

 まずはその企業に本音のところを話してみてはどうだろうか。そこで学生の話を聞いてくれない企業は入ってからの自由度も低そうだ。

(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/


     

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