新社会人は初めて会社組織で働く人も多いだろう。コロナ禍が続くなか、会社での仕事の進め方も大きく変わってきた。密を避けるため、従来のように多人数で集まることが非常に少なくなっている。ひとつ気になるのが、新人たちの教育だ。新人にとっては、近くに先輩がいなければ困ることだらけだろう。
「配属されてからの職場内訓練が中心で、リモート環境には不向きだ」「欧米と比べて職務規定があいまいで、やるべきタスクがわかりづらい」。メディアなどを通じて、ここぞとばかりに「日本式」批判が展開されているが、現実は少し異なる。コロナ禍だからこそ、リモートだからこそ、新人教育が進化している部分もある。
リモートなら業務のログ(履歴)が随時残るので、プロセス上の小さなミスもくまなくわかる。画面越しで見える範囲なら、いつでも観察もできる。さらに、会議や打ち合わせも、個室やブースなどの物理的制約なく随時可能だ。課会のような多人数の会合も、皆のスケジュール調整なくできる。つまり、手取り足取り型の育成をリモート用に作り替えると、今まで以上に育成がはかどるという。
取材中、課会で新人社員が泣き出す場面に遭遇した。業務がわからなくて困っているという。リアルだとてんやわんやになるところだ。ところがリモート慣れした課長は、とっさにその新人を担当するリーダーと個別チャットで「特別会議」を始め、事情を聴いた後、元の皆のメンバーとの会話に戻った。課会中にこんな芸当ができるのもリモートの良さだ。企業に「しっかり教える」気があれば、どんな環境でもその意は通じる。
新社会人に1つ提案がある。リモート環境を使いこなす提案を自らしてみてはどうか。「業務の進め方をすべてログとして残しておきました。早送りで見てどこがいけないかアドバイスいただけませんか」「リモートで多人数の打ち合わせ中でも『ブレークアウトセッション』を使うと、2人きりにすぐなれます。どうしてもわからない場合、これを使って課長に特別指導いただけませんか」などなど。
こうしたリモート環境に慣れていない企業もまだ多い。現代の若者である新社会人はサイバー環境のなかで育ち、明らかにITリテラシーは旧世代よりも高い。思い切って、こうした知恵を旧世代の先輩に教えてあげるのも手だ。指導がはかどれば先輩は喜び、新社会人にとってもメリットにつながる。ぜひ、試してみてはいかがだろうか。
(雇用ジャーナリスト)