知っておきたい就活情報

【就活のリアル転載】<会社のリアル>ダメダメでも助けてくれる メンターを見つけよう 上田晶美(2021/4/16付 日本経済新聞 夕刊)(2021/04/20)


 「会社の仕事って本当に地味なことの積み重ねですね」。ある優秀な大学を出て、誰もがうらやむような有名企業に入った女性がそう言ったことが忘れられない。輝かしい経歴に十分見合った企業だと思うが、その光り輝く「有名企業」という器の中で送る毎日は、地味な作業の積み重ねに感じられるようだ。

 「思っていたのと違った」と、学生だった皆が入社後、口々に言う。それは就活が複雑化した時代になったことで生まれたギャップかもしれない。1年以上にわたり、就活にいそしみ、企業研究を深堀りする中で仕事に対する理想は膨らんでいく。社会に貢献したいと崇高な理想を持つようにもなり、思い描いていた仕事と現実とのギャップに悩むのか。そんな地味な仕事自体も最初はうまくこなせず、落ち込む要因になる。

 そこで私は自分の新入社員時代のことを話すようにしている。伝票処理など地道な仕事に興味が湧かず、失敗だらけのダメダメな社員だった。現在はキャリアコンサルタントとして起業し、大学の講師もしているが、その前に会社員経験が10年ある。そこで経理処理も含めビジネスの基礎はすべて教わった。

 給料をもらいながらビジネススクールに通っていたようなものだとさえ思う。起業して今の私があるのは、あの10年間のおかげと、ただただ感謝するばかりだ。そんな話をすると、元学生たちは安堵してくれる。先生にもそんな地味な昔があったのですね、と。

 さて、そんなダメダメだったにもかかわらず会社員生活が10年続いたのは、周囲の人の支えがあったからに他ならない。社内外の人によく相談に行った。今でいう「メンター」のような存在である。「メンター」とは助言者、相談者という意味で、今では社内に「メンター制度」を設けるところもある。直接の上司というよりも、別の部署の少し先輩という場合が多い。

社内にメンター制度がなくても、社外の人でも構わないので相談に行こう。今では私も学生たちにとってその「メンター」の一人として、あの頃お世話になった恩返し、恩送りをしているのだ。

 新入社員のみなさん。これから始まる会社員生活は予想していた毎日とは少し違うかもしれない。戸惑ったり、悩んだりするだろう。困ったらとにかく一人で抱え込まないで誰かに相談してほしい。友達でもいいが、少し先輩の話しやすい「メンター」を見つけてみてはどうだろうか。

 新型コロナウイルス禍で自由に飲みに行ったりはできないけれど、オンラインを活用し、まずは相談してみよう。

(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/


     

前のページに戻る