「筆記試験が通らず面接に進めません。筆記がこんなに大事だと誰も教えてくれなかった」。ある大学4年生から相談が来た。「もう就活をやめてしまいたい気持ちです」という。筆記で苦労する人は毎年いるが、今年は特殊な事情がありそうだ。
コロナ禍で通学の頻度が減った「情報過疎」の影響である。大学のキャリアセンターからの情報収集や学生同士の情報交換の機会が失われ、筆記試験の重要性が例年以上に周知されにくくなっている。本来それなりの対策が必要なレベルの学生が、対策が不十分なまま本番を迎える傾向が強いのかもしれない。
大学によっては就職対策講座の開催が減ったり、遅くなったりしたケースがあった。Zoomなどのオンライン開催に支障があったせいである。一方で「オンラインで例年よりも全体ガイダンスの参加人数が増えた」という大学もあり、大学間格差が出ているようにも感じる。
ただ各大学共通して、個別面談には苦労している。オンライン枠の確保が困難で参加者が限られ、個別の手厚いフォローはできていないと聞く。神奈川県のある大学のキャリアセンターの担当者は「全体のガイダンスには参加しても、個別の講座は自分の好きなものだけを選んで聴く傾向がある。特に筆記試験対策の講座は参加率が低く、課題を感じている」そうだ。
今さら計算問題などの勉強がおっくうであることは分かるが、それは毎年同じこと。今年はコロナ禍で通学していなかったので、情報感度の高い人しか講座開催を知ることができない事態も生じた。例年であれば、キャンパス内のポスターなどで開催を知ったり、友人の参加を聞いて「私も勉強しなくては!」という気持ちになったりもしたことだろう。友人同士、SNSなどでやりとりしても、就活の話題にはなりづらいものだ。
講座に参加しても、オンラインだと他の学生と比べた自分の力を推し量るのは難しい。集中力にもムラが出がちだ。いくら話の上手な講師でも、学生側がカメラをオフにしてゲームをしながら聴いているのでは、大して身にはつかない。筆記試験対策は、大学の他の講義と違って、聴くだけでなく、計算問題を素早く解くというようなトレーニングの部分を併せ持つ。
筆記試験が就活のステップに必要なのかは議論の余地があるが、一つの関門としている会社が多い現実は、ここ数年で変わるとは思えない。今年が就活の学生の皆さんは急いで、一週間でもいいので集中して勉強してほしい。来年以降の人たちは、英語能力テストと筆記試験に足をすくわれることのないよう、今からの準備をお勧めする。
(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/