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【就活のリアル転載】面接は偽装を暴く 評価もらうのは「素」の自分 海老原嗣生(2021/5/25付 日本経済新聞 夕刊)(2021/06/01)


 前回(先々週)、「企業は学生の素を知りたい」「自社の仕事ができるか、社風に合っているかを知りたい」、だから面接をするのだ、と書いた。

 にもかかわらず、学生側は素をなかなか見せない。だから、着飾ったその服を脱がせて、素の自分を見せてほしいと、意地悪な質問をする。ただ、そうした質問に対しても、万端に準備をして着飾った自分を見せようとする。そこでさらに意地悪な質問をする。この繰り返しで学生はへとへとになり、就活鬱にはまっていく。

 なぜ、こんな悪循環になるか、いくつかの理由と対策を以下、講じておく。

 まず「企業は良い人を欲しがっている」という誤解を解くこと。身の丈以上の人を採用しても仕事や職場になじんでもらえず、企業にとっては困るだけだ。それよりもやはり、合う人に来てほしい。面接はそれを確かめる場、と考え方を変えること。

 そして、しっかり素を出したのに落ちた場合「ありのままの私を愛してくれない企業なのだから、落ちてよかった」と思う。隣の友人が受かったとしても、卑屈になることは全く無用。その友人に合っていただけなのだ、と考えを変えよう。

 2つ目は、不慣れで緊張してしまうこと。これだと、本来なら合っていて受かるはずの企業まで落ちてしまう。この点に関する処方箋はいたって簡単だ。面接をたくさん受ける、それに尽きる。度胸のある話のうまい学生でも最初の2~3社は話がまとまらず、ミスを連発するものだ。標準的な学生なら5社程度はこんな状態になるだろう。

 そこから少しずつ場が見えてきて、慣れて肩の力が抜けるのは10社目あたりから。このころになると、企業が聞くだろうポイントや、喜んでくれるエピソードなどもだいぶ見当がつくようになっている。
だから私は面接必勝の近道として「まず10社と面接しよう」と伝えている。

 3つ目は「企業に『合っている』」「企業が『欲しい』」人材に成りすます行為。これが一番最悪のやってはいけないことだと心してほしい。まず、応募学生はその会社に勤めたことなどない。風聞や先輩談などのあてにならない話をもとに、想像しているだけだ。それが大きく外れている場合は、即、命取りになる。

 正しかったとしても「素とは違う自分」で面接を受ければ、たいていは見破られる。相手はそういう偽装を暴くために面接をしているのだから。

 運良く見破られず内定することもないわけではない。ただ、素とは違う自分を評価する企業に入れば、本当のあなたは苦しみ疲れ果てるはずだ。

(雇用ジャーナリスト)


     

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